「有言実行」者のバカさ加減

 特に何か契機があったわけではないが、気に障る言葉なので、一回くらいこのような場があってもよいだろう。

 その気に障る言葉と言うのは「有言実行」である。

 私もプロのさらりまんなので、故事成句や古くからの言い回しをちょっと変えて、何かの標語とか、記憶しやすいようなことと関連付けがしばしば行われていることがあるのはわかっている。でも嫌いだ。
 この言葉のもとになったのは当然「不言実行」であるが、やっぱりその方がクールだと思う。私のつたない理解では、誰にも言わずに誰もがやらないこと、誰かがやるべきことを自ら行うこと、と解釈している。英語でよくある言い回し"Just do it!"とは対照的に"Just done it."てな感じか。「不言」なので、その行動の主体はその人であり、「不言実行」と思った時点で、その人の行いを称賛していることになる。

 私が「有言実行」なる言葉から連想することは「やらされ感」「目立ちたがり屋」「鼻につく優等生」「上から目線」「妬み」等々マイナスイメージのものが多い。
 まず、「有言」なる時点で既に他人に褒められることを担保(笑)し、言ったことをやれたら誰かから「褒められよう」と言う気が満々である。しかしその実態はどうだろう。とりあえず何かしらを「有言」した人は、目標を皆に宣言しているかのように思えるだろう。しかしこの言葉はその組織の運営者が手を抜く方便である。自らを馬として、その前に自らニンジンを吊るした状態と言える。例えば、私は営業職ではないけれど、営業職の人々はたぶんその期の始まりに目標売上〇〇円、などと目標を言わされ、運営者がその額に不満ならば幾らにしろ、とか言われて抵抗しながらも上積みするのだろう。
 そこまでして自分を追い込み、頑張って目標を達成したとき、「〇〇君は有言実行したな」と言われる瞬間は確かに称賛と受け取っても良いが、言っている奴が問題である。そう、上から目線であり、それを聞いた他人はその達成者を「妬む」んじゃないかなぁ、と想像する。もしかすると自分と同じ立場や、部下の人でそう言っている人も居るかも知れないけど、褒める前にその人を評価しているわけで、それこそ悪い意味での「上から目線」発言であることを自覚すべきである。
 目標を達成できなかったらどうなるか。「目標が高過ぎたんだよ」などと優しい言葉をかけてくれる人はいない。「口先ばっかりの奴だ」と言われる。マイナス評価になるわけだ。
 そう称賛?された人は、更なる高みを次の期には目標とし、更なる頑張りを続けるのだろうが、それは永遠に「終わらない」。頑張れば頑張るほど、あなたはその立場から動けなくなる。終われるのはたいてい、成績不振のレッテルを貼られてからである。イマドキ珍しくもないメンヘルコースになるポテンシャルをはらんでいる。
 誰かを上から目線で「有言実行」と褒めた人は、それができない人である。だから身内に目標達成者を増やすことで自らの能力を示す。全体の目標に達しなかったら自ら降格するか、引っ込めと言われるべき者である。その頑張り屋がたまたま伸びて偉くなれば、自分も偉くなるし、手放すわけがない。
 ま、そうやって組織運営はなされるものだけど、ビジネスの世界はとても重視されることだ。目標を達成できなければそれは株価低迷として現れる。いや、目標の高低すら関係ない。他より良いことが生き残りの条件だ。

 ここで私が思ったことをあなたがどのように受け止め、何かしらの際に話をして損害や不利を被っても私は責任持てないので念のため。

NexDock2 vs Mirabook

 つい先日KickStarterで入手したNexDock2のことを書いたが、その後IndieGoGoから、お前が登録していたプロジェクトのアップデートがあったとダイレクトメールが届いた。そのプロジェクトはMiraxess社のMirabookと言う、やはりKVMデバイスを作るもので、そう言えばそんなものもあったなー、と思い出した。アップデートの購読登録のみでバックしてない奴。
 アップデートの知らせが来たのに、IndieGoGoのページを見るとプロジェクトは既に"Closed"って書いてある。つまりそのファンディングサイトでは失敗した、ということになっている。アップデートにはちゃんと書き込みがあって、財政上の問題とか遅延とかで苦労した、集金力の高い、より確かな経営基盤とするためにIndieGoGoから抜けて自分達のサイトを立ち上げたので、そこからプレオーダーしてね、今の優先事項はバッカーの方々に品物を届けることだ、って内容だった(一部意訳あり)。まあ、こんな終わり方は丁寧な方だ。

 NexDock2もMirabookも現在はそれぞれのサイトでプレオーダーを受けている。プレオーダーの価格は前者が$259、後者が$329である。

 IndieGoGoは成功しても失敗してもプロジェクトのライフサイクル管理を建前に、プロジェクトのページは延々残る。なのでそこを(時には他の製品の)宣伝サイトにしているところもあるようだ。無論、お金を集めて作れなくて夜逃げしたチームの履歴も残っている。それがあっても何もしないのがIndieGoGoの運営である。バッカーのためのアクションは一切しない。一部のコメントでは中国人が金とクレジットカード番号をだまし取るためのサイトと言う悪評も聞く。KickStarterの後、さらなる集金のためにIndieGoGoに同じプロジェクトを立ち上げる場合もあり、IndieGoGoとしては後出ゆえにそれを許容しなければならないのだろう。

 今、Mirabookのバッカー達は疑心暗鬼の渦の中だと思う。当初のどのようなリワードが幾らであったのかは既に削除されていて定かでない。私がかなり遅めにバックした時のNextDock2が$209だから1.5倍くらいお高い。プレオーダー価格でも1.27倍。検索すると日本語のWEBページで受付をしているHTLとか言うITコンサル会社がある。つい先月、2019年の12月に受付開始。YouTubeにも200台限定発売開始、とか宣伝があるみたいだが、バッカーへのリワード最優先とある上述のプロジェクトアップデートの内容と矛盾しないのか。いやいや、これこそがIndieGoGo外での資金収集の手段なのだろう。うわ、ここから買うと税別¥48000だ。海外での予約販売価格$329に、高い時で約$60の送料とって為替手数料やら通関の税金(「ちゃんとした」配送業者なら関税込みの値段を提示している場合もあるが?)払うとコンパラなのか。更に国内「販売」なので消費税が1割付いて¥52800、あれ?一部のニュースじゃ税込み¥52000になっている。まあ、イロイロダボダボの誤差の内か。

 Mirabookの経緯は奇しくもクラウドファンディングの弱点を知る機会になった。クラウドファンディングの利点は、すぐ始められる、全世界に向けて投資を促すことができる、の2点だと思う。しかしバックに対するリワードとして開発した製品を返すとなると、それはその製品を欲しい人しか応募しない。個人の額は少なく、時には予定の数百倍集まることもあるが、ほかに類似のプロジェクトがあったりすると競合し、そのサイトだけでは必要額が集まらなくなることも普通に起こる。募集金額をどのように決めるのかはよく知らないが、そのサイト以外でもお金を集めたい場合、今回のような措置をとることになるだろう。しかし、お金持ちのパトロンでも付かない限り、存続は難しそうだ(もちろん開発チームは同意しないだろうが)。更にこの移った先でプレオーダーすると、当然、当初のバッカー達が払った金額より大きいものとなる。「プレオーダー」と言ってもMirabookの場合は製造段階に居るわけでもなく、細々としたサイトでの集金はあまり望めないだろう。
 ついでに付け加えておくと、今回のような製品をリワードとして受け取るプロジェクトをバックすると、それは最も欠陥を含んだロットが返されることになる、と言うことを覚悟しなければならない。

 Mirabookチームの敗因は、当初予定していた金額では作れなくなった、と言うことだろう。見積りの際にサイトからどのようなアドバイス、ガイドがあるのか不明だが、それを誤ったわけである。チームの集金目標は最低で5万ドル、その次が10万ドルで、これがほぼ間近だったんだけど、力尽きたと。つまり、最初の5万ドルでは何もできなかったわけだ。元のプロジェクトはフランス発のものだったようだが、今引き継いだMiraxess社は米国籍になっている。アメリカ人は展示会好きで、その時に人を集めていた風景をいっぱい流して宣伝するのがパターンである。でも米国の展示会ってかなりお金を払うんだよ。今、国内の展示会出品もどんどん割高になってきているけど、米国は桁が違う。「会場屋」の組合も強力で金を奪っていく。ま、入場料も桁が違って、それで主催者は損益ゼロかプラスになるようにできている。たった5万ドルの資金で大規模な展示会に出品すると、プラ部品の金型代にも困ることになるだろう。
 因みにこのチームの最大の目標金額、15M$とかホント夢だわ。リワードも次のプロジェクトの試金石にするとか言ってるが、絶対やらないな。私なら遊んで暮らす。その金持って逃げてもIndieGoGoならザルだし、詐欺に走る動機になる金額だ。

#いや、まだ失敗したと決まったわけではない。バッカーへのオブリゲーションを完遂すれば、こうしたら成功した、というケーススタディにもなる。しかもバッカーにはちょっと遅れて配送する分、完成度も上がる…とバッカーや開発チームは信じている。

 二者を比較。久しぶりにHTML直打ちなんで、うまく打てるかな。

項目 NexDock2 Mirabook
バッカー数 2166 670
バック金額 5000万円 1090万円
プレオーダー価格 $259 $329
募集開始日 2019 March 2017 April
スクリーン 13.3inch1920x1080IPS 13.3inch1920x1080???
重量 1.479kg 1.3kg
位置付け 汎用型KVM+スマホデスクトップモード (ほぼ)スマホのデスクトップモード用
画像入力端子 HDMI, USB-C(ケーブル別体) USB-Cのみ(ケーブル内蔵)
画像出力 なし HDMI
USB-Cポート 3-充電用、画像入力、デバイス接続 2-充電用、デバイス接続(画像入力は内蔵ケーブル)
USB-Aポート 1 2
シャーシ材質 アルミ アルミ
SBCの接続 HDMI及びUSBケーブル ラズパイのみサードパーティ開発中USB-Cボードで対応予定


 どちらも共通なのがマイクロSDカードリーダとφ3.5オーディオジャック。VGAポートはいずれもなし。

 スペック的に見るとMirabookはNexDock2の「機能エンハンス」と言う名の廉価版と言う位置付け(でも廉価じゃない)。ターゲットをUSB-Cからの画面出力機に限っている。現時点では「割り切り過ぎ」かと。今のところ一部の高価なスマホにしか対応できない。その代わり?HDMIポートは画面「出力」になっているんだけど、画面が拡張するのかコピーされるのかよくわからない。一方NexDock2は多少重くてオーソドックスな構成に振っているが、その分、例えば古いデスクトップのコンソールとしても簡単に適用できる。FireStickつなぐもよし。今どきのSBCはHDMI装備かヘッドレス。私の場合は、NexDock2で正解だったようだ。

NexDock2

 めでたい話。
 米国Nex Computer社がKickStarterでお金を集めていたNexDock2がこの度完成し、そのリワードが先日届いた。
 ちょっと紹介。

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他のプロジェクトで見たことのある紙質のパッケージ。ミニマル。

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本体。置いている定規は30cm

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わずかばかり古さを感じるデザイン

 NexDock2は同社の、クラウドファンディングにおける第2弾の募集で作られたデバイス。初弾の、同じコンセプトのNexDock(こちらはINDIEGOGO)が成功裡に終了したので、知っている人は知っているだろうが、この製品はノートPC型KVM+α、ってシロモノだ。KVMってのはもちろんキーボード、ビデオ、マウスのことである。その実態は英語版キーボード+13.3インチ、フルフラットのフルHD16:9のIPS+広いタッチパッド。面倒くさい組み合わせなので「デバイス」と形容している。


 これは「ターミナル」でも「シンクライアント」でもない。この製品にターミナルたり得る機能は備わっていない。逆にシンクライアント「マイナス」CPU、あるいはノートPC型「KVM付きUSB-Cハブ」、と呼んだ方が妥当かも知れない。「マイナスCPU」と書いたが、何かのプロセッサは載っていて、ちゃんとファームウェアが動いている。が、そのCPUをOSやアプリケーションを動かすのには使っていない、ってことだ。KVM以外に、それをドライブするバッテリーも内蔵している。当然内蔵KVMも電力を使うが、容量が6800mAhあるので、メーカーとしてはモバイルバッテリーの代用もできるよ、と言っている。

 

 話は前後するが、私が初代NexDockを知ったのは旧プロジェクトが終わった後、ラズベリーパイなどのシングルボードコンピュータ(SBC)を使うのにお手軽な環境は無いかなーと探していた頃。連絡先に問い合わせたが既に在庫は無く、残念に思っていたところ、運よくKickStarterでのNexDock2の募集に気づき、申し込んだ。バッカーとしてはかなり遅い方だったけど。この手のクラウドファンディングでは、失敗する憂き目にあったこともあるが、Nex Computer社は初代を成功させたのだから信用した。私が申し込んだときは1台のリワードでUS$209+送料。プレッジ総額は$50万弱、バッカー数は500人ほど減ったが、金額は前回をちょっと上回ったようだ。おそらく少量を扱う業者が混っているようで、日本でも取り扱いがある。まあ、お値段は2倍くらい。
 その頃には所持していたディスプレイとかキーボードをつないでSBCを動かす環境は持っていたけど、レアなデバイスだし、まさにこんな話のタネに入手してみた。

 NexDock/NexDock2は、KVM「スイッチ」ではないので、繋ぐ相手を変えるにはせっせとケーブルを差し替えなければならない。ケーブル数が増えるのが難点。これを意識してか、付属するケーブルはいずれも短め。でもSBCやスマホで使うときは、内蔵バッテリーが電源になるので、そこだけはUSB-Cで兼用できる。USB-CからUSB-microBのパワーケーブルとUSB-Aに分離するへんてこりんなケーブルを使うのだが。

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ラズベリーパイを意識して給電用USB microBとType A(USB-3?)へ分岐するType-Cケーブル

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付属品。簡単な説明書は気づいたら箱の中でグシャグシャだった

 背景及びどんなデバイスかについてはこれくらい。モノとしてのデキの話。
 まず、全体的に随所に拘りを伺える、かなり良質な仕上がりになっている。
 筐体はアルミ製、画面はフルフラットでちょっと重量はある(実測で1478g)。キーボードは浅いストロークながらしっかりした打鍵感がありMacBookに迫る品質だ。キー自体もあまり見ないもので、キー周辺に少し盛り上がりがある独特の形状。Surface Proのカバー兼キーボードなんか、これに比べるとおもちゃっぽい。液晶の表示も自然で、ドット欠けなし、色ムラとか、バックライトの不良も今のところ無い。
 PineBookで使われているような汎用プラスチック筐体の正常進化形。もうこれで良いんじゃないだろうか。製造は中国だけど(会社はサンフランシスコ)細かい手直しを要求した模様。USB-Cの充電器も終了間際に大容量タイプに変わった。付属する充電器は5v, 9v, 12v, 15v, 20vのPD電源で、電流はいずれの場合も最大3A。

 キーボードの左サイドにはUSB-Cのポートが3個ある。用途は決まっていて、一つは電源入力、一つはキーボードマウスの出力、もう一つはデスクトップモードに対応したスマホにつないで画面を乗っ取ったり、キーボードマウス操作を入力したり、スマホを充電したりする。

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NexDock 2 左側面 ネットワーク系のインターフェイスは無いので最も厚い部分でも18mm(含むゴム足)

 左側面にはもう一つ、標準サイズのHDMI入力がある。そう、これは「入力」。デスクトップPCをつなぐ場合は画面出力はこれにつなぎ、USBをつなぐことで動作環境が整う。私はいつもはコタツトップPC、ファンレス小型のCore-i7機をつないでいる。
 右側面にはUSB3.0のポートが一つ、SDカードスロット、ヘッドフォンジャックが付いている。これらが「+α」の部分である。そういえばスピーカーもこのデバイスには内蔵している。4個内蔵しているらしい。音声入力端子が見当たらないからおそらくこれはHDMIから取り出している音声だと思われる(USBのデジタルアウトを使っているとは思い難い)が、お世辞にも良い音とは言えない。他のノートPC同様、オマケだ。

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NexDock2右側面

 このお値段でこれ以上は無い、つか、他にこんなデバイスは無いのだから当然か。
 ただ、この筐体をベースとしてシンクライアント、例えばArmのLINUXには簡単に転用できると思う。最初のNexDockは、その後購入したAArch64の$100PC、PineBookと外観がそっくり。全く同じかはわからないが、初代NexDockに類似した外殻は汎用品としてたくさん作られているようで、AliExpressあたりを見ると、似た外観のWindows PCも廉価で出回っている。

 バッカー数は2166人だが、宣伝すればもっと売れるんじゃないのかな。台数は幾つ作るのか知らないが、このバッカー数ではクラウドファンディングから脱却するのは難しそうだ。だけど、今はただ「お疲れさまでした」と伝えておいた。

 

ベンジンカイロの恍惚

 冬のバイク乗りの友、変人回路、じゃないベンジンカイロ。
 中でもハクキンカイロ(Peacockって何だっけ)は温州住まいの私のお気に入りである。
 タバコは吸わないけど、ジッポーで堂々と火遊びする口実にもなっている。

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左からハクキンカイロ、KAWASAKIカイロ、ジッポーライター


 ハクキンカイロの強みは、何といってもその名の由来である白金を使った火口である。なぜか中国経由で入手したKAWASAKIカイロ(バイクのカワサキとは関係ないと思うのだが、パッケージにはカタカナでカワサキと書いてあり、カワサキグッズの中に似たやつがあった。もしかしたらそのコピー品かも)も、火口をハクキンのものにしたら復活。ハクキンカイロの成功は、その火口のサイズを世界規格にしたことでわかる。
 私のハクキンカイロは小型の「mini」って奴だが、KAWASAKIカイロの方が更に小さくて(ジッポーを一回り大きくしたくらい)、手で握って温めるのにはちょうど良い。綿がベンジンを吸わなくなる程度に満たせば、何とか朝の8時から20時くらいまでもつ。歩いたり走ったりするときに手先が冷たくなるのを、これを握って和らげる。まあ、燃料が飛び散るほど入れるとやけどくらいじゃ済まなくなるかも知れないので、いつも少なめにするよう心掛けている。


 化学式的に燃焼と何が違うのかよくわからないが、原理的にはベンジンを燃やしているようだ。ベンジンを燃やしてCO2と水に換えている。その燃焼を、触媒の白金が維持している、ってことらしい。でも、時々点火の後に火口の繊維の裏側が薄っすら赤くなるのは、ほぼ炎なのではないか。また、元KAWASAKIカイロに付いていた火口をよく観察すると、繊維表面に微小な炎が赤く上がるのを目視できた。ベンジンをしみこませた綿なら容易に燃えるだろうが、綿自体が焦げたりしないのが不思議だ。ろうそくの芯として機能したら多少綿が減りそうなものだが、それがないのはやはりいつもの炎を上げて燃えるものとは異なるのだろう。いや、白金が酸素を吸着して云々って記事は読んだことはあるが、触媒があって燃焼が遅くなるのが不思議。

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ハクキンカイロの火口をKAWASAKIカイロにつけて点火。すすけた表面の裏からほんのり赤い炎?



 実は白金を触媒として使う例は、私がベンジンカイロを知る以前にもあった。模型用エンジンのプラグである。あれは燃料の爆発自体で赤熱して(最初は電池で赤くする)、次の圧縮で勝手に燃焼条件が整うとまた爆発を起こすのかなーと想像していたが、どうもそんな単純な話ではないらしい。片や「緩慢な」燃焼、片や爆発。何も減らない「触媒」、でも繰り返すと劣化するの?
 とまあ、そんな少し謎なところも惹きつけられる原因の一つだ。

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カイロの火口(裏側) 左がKAWASAKI、右がハクキン

 懐炉と言えば、昔おばあちゃんが幅広のメガネケースくらいのビロード張りの金属ケースに、太めのろうそくくらいの桐灰の炭を二本入れ、冷たい布団に入っていたのを覚えている。今思えば、それよりもベンジンカイロの方が温かいけど、寝るのはどうかな。下敷きになると、ケースが変形したり、ベンジンが漏れてしまうことはないだろうか。
 その桐灰からアルミ箔っぽい袋に真空パックされたカイロが発売されたのだが、それが私が最初に見た使い捨てカイロである。当時は「使い捨て」なんて接頭詞はついておらず、一個千円くらいするもので(と言っても誰かからもらったものだったと思う)、もったいなくてずっと使わずにいたら、あれこれと進化して今のビニール窒素?パックの使い捨てカイロに切り替わった。ある日、忘れていたそのアルミ箔っぽい袋に真空パックされたカイロを開いてみたら、全く暖かくならなかったのも遠い記憶である。

 ただねー、ホントのことを言うと、バイクに乗る時はあんまり使わない。エンジンヘッドの方が簡単に熱くなるし。Vmaxだと容量4.7Lのオイルヒーターだね。あ、ミッションオイルと冷却水も温まるのか。

特急路線を廃止する方法

 時々使うJR九州佐世保線、博多-佐世保間の特急みどり。
 いろいろ問題のある路線である。

2019年10月3日 みどり21号
「車両点検のため車両編成?変更を行って、(いつもは8両だけと)本日は4両編成で運行しています。そのため本日は指定席はありません。」

 最初の感想は「何それ?」

 列車に車検があることは知っている。でもそれは予定されているものであり、だからと言って車両を減らす、ってのは初めて聞いた。これは理由の説明になってないが、アナウンスはこれ以外のことを喋らない。座席指定券は払い戻される。

 次の思いは「何で指定券売ったんだろう?」昔々、JR発券システムを納入した会社に居た。だからそのような予定は直ぐに織り込んで発券停止にできるのは知っている。私は乗車当日、関西のある駅でそれを購入し、博多のホームでこれを知った。

 次に沸き上がった感情は「怒り」。
 よく考えて欲しい。仕事で交通にお金を払うのは時間を買っていることとほぼ同義である。本来プライスレスの時間が買える特殊で貴重な市場である。座席指定券も例外ではない。何となく上中下の切符(無論グリーン切符が「上」)と解釈される向きもあるが、座席指定の意味はことビジネスユースでは全然違う。JR九州がどういう計算で座席指定券の値段を決めているのか知らないが、座席指定券は列車が発車する直前までそこに並ばなくても座れる、と言う、乗車直前の時間を買っているのである。その「約束」を駅の慇懃なアナウンスくらいで反故にできると思ったら大間違いである。なぜならそれはJR九州が「無い商品を販売した」ことになるからである。単純な話、我々は騙されたのである。だから怒りの感情が湧いたとして何の不自然もないはずだ。

 だからと言って何も糾弾するつもりはない。お金は戻って来たのだし、自由席に結局座れたのだから。でもグリーン車は確保していた、と言うのは納得し難い。そこは乗客を「上中下」で区別する考え方がJR九州内部に残っている、としか考えられない。不公平な扱いであるのは言い逃れはできまい。

 

 まあ、怒りはコントロールできる。駅員がいくら謝ってもこのような運行を決定した責任は彼らにはない。この怒りを鎮めたのは乗客に直面している駅員にもその理由が明らかにされていないからである。たぶん、こうアナウンスせよ、としか指示がなかったのだろう。責任はそう指示した隠れた誰かにある。

 

 では怒りは鎮めて、今回の事件の原因をどう考えるか。二つの解釈がある。
 先ほどチェックしたJR九州のホームページには全く説明どころか、そんなことがあったとすら載っていなかったから、ここからはあくまでも私個人の勝手で矮小な想像である。
(1) 事故。つまり、車検(定期か不定期かわからないが)に通るはずだったが、異常が発見されて代わりの車両が四両しか無かった。これは間違いなく事故である。

(2) 故意。文句を封殺できる(と思っている)西の果てなので、この特急が四両で十分かどうかを検証した。つまり組織的詐欺。

 (1)は車両が壊れているのが見つかった、あるいは通るはずの車検(いや、定期点検では無くて日常点検)が通らなかった、かつ替わりの車両が四両しかなかった。つまりJR九州の甘さが原因。容易で平和な解釈。

 (2)は意地の悪い解釈だが、長崎・佐世保線が、九州新幹線、長崎新幹線計画の陰で廃れていることを勘案すれば容易に思い当たる。まず、九州新幹線。これは博多の先、新鳥栖から分岐する。JR九州としては新鳥栖まで新幹線料金を払ってもらう方が利益になる。そのため、みどりは博多で接続が悪くなった。今日もダイヤ通りなら博多に大阪方面から新幹線が着いた数分前にみどりが発車している。次のみどりは一時間弱(この時間帯の特急はほぼ一時間に一本)待つことになる。このため乗換案内などのWEBサイトではみどりは出てこない。JR窓口ですら指定しないと出てこない列車になった。こうして忘れさせていくのである。


 ちなみに、九州新幹線の乗り換え、新鳥栖駅には「何もない」。数回利用したが、売店も改札を出ないと無い。改札から出ないなら駅員もほとんど見かけぬ無人駅と変わらない寂れようだ。だから時間をつぶすなら博多駅なのである。


 もちろんJR九州は空き席の目立つ列車は廃止したい。それでも長崎県の商工会を中心とする団体がフル規格新幹線を望んでいる。ではまず車両数を減らせるか見てみよう、と言うわけである。新幹線を通せばかもめ、みどりの本数は確実に減る。どのくらい減らせるか。退勤時間の始まる21号で試してみたら、半分でもokじゃん。佐世保線には早岐から分離するハウステンボス号も付いていたが、それも最近見ない。


 いや、JR九州にその調査をするな、と言っているのではない。彼らも民間企業。でも今日の事故がもし故意であれば、あまりに酷い調査方法だ。政治家の皆さん、足元見られてるよ。新幹線の恩恵を受けない県北は寂れる一方だ。

 

 佐世保市はあらゆる面でかわいそうな位置にいる。巨費を投じる長崎新幹線の恩恵は県北には無い。元々、長崎県の県知事の視線は県北には向いていない。県民税の殆どは県知事の息のかかった南部に使われる。有明海の騒ぎ、あの門を開けるのか閉めるのかもめているやつだが、干拓でできた土地はは県知事のおひざ元の農民に与えられ、漁業には補助金が出る。長崎県に限った話では無いが、この国に第一次産業「へ」の職業選択の自由は無い。佐世保市のサラリーマンの方々はどんな思いで県民税を払っているのだろうか。なぜそこに住み続けているのだろうか。企業にとっても「企業追い出し税」の悪名も聞く。穴居人と明治以降の極端な歴史はあるが、公務員と老人ばかりの今に魅力は無い。

 佐世保にはアメリカと日本の軍港がある。そのため西の僻地にしては人口が維持できている(それでも微減らしい)方だが、自衛隊でも米軍でもNHKでも佐世保勤務は「左遷」と聞く。訪問者にはせいぜいAFNが聴ける、くらいのメリットしか見当たらない。米国軍にはすこぶる評判が悪いけど。

 

冒頭に「いろいろ問題」と書いた。他にこの路線の問題は;
・常に遅れる。車内アナウンスが「電車が遅れまして」と謝るのがウンザリ。

・乗りにくい。乗車位置が車両の中央。どうせ中古の使いまわし列車だが、どこに何号車の乗りこみができるのか、ごく小さな標示板にしか出ない。
・トイレが汚い
・2019年10月3日だけだったかもしれないが「早岐->佐世保」は指定券が要らん、とアナウンスしてた。途中に二、三無人駅があるけど、特急料金って一体何?

 

最果ての地、っていろいろ最果てだよね。

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回収された乗車券

 

違法…

違法…

 と犬のお巡りさんとか、とある俳優がガラの悪い恰好で唱え続けるCMがある。
 テレビコンテンツのアップロードをやめさせようとするCMのことだ。俳優の方はおそらく「これは重要なことだ」と責任感をもって出演されたのだろうが、「あんたもつらいね」と同情を示しておこう。
 ソフトウェア業界に連なる者として、私の収入源も著作権である、と言える。独占権が無いのが作家先生とか音楽家の方々との違いである。

 この話を持ち出したのは、CMのできが悪いからだ。

 なぜアップロードは悪い事なのか。違法だから、で納得するほど人間と言うもののできは良くない。こんなCMで良しとする依頼主はかなり強権的だが無教養な人なのだろう。そんな奴に諭される人なんかいない。

 私も、著作権の重要性を本当に理解するまで長い年月を要した。今もまだ理解の過程、もしくは遅すぎた、とも言える。身の回りの何が著作権で守られているか、そのアップロードが誰にどれほどの損害を与え尊厳を侵害するのか、そして自分がもし奪われる側の立場になったらどう思うか、その想像力を養い、培うのがこの手のCMの社会的役割だと思う。「だから違法になっているのか」と気付かせることが最終目標ではないのか。
 このCMには少なからぬ公金が使われているだろう。一般企業のCMとは全く違うことを理解すべきだ。このCMがテレビコンテンツに限ったものなのかはわからないが、そんな縛りは意味不明、逆に理解され難くする。

 著作権を尊重する、と言うのは公私の境界を区別する一端である。それは各個人が生涯ずっと守り続けなくてはならないものだ。
 理解できても実践し続けるのはとても難しい。それは資本主義国家の生命線である。共産圏の方々が「人の物は俺の物」と思うのは理解できるが、おそらく「俺の物は人の物」と言い切る人は少ないだろう。著作権を唱えることは「俺の物は俺の物」よりも「人の物は人の物」を教えることである。国家のあり方なんかより、実はもっと根幹的なものではないだろうか。
 ぶっちゃけ、生涯を通して一度も著作権違反をしないで生きていくことはできない。図書館はグレーだし、友達にCDを貸したり借りたりすることも取り締まるのか/取り締まれるのか。でもだから違反して良い、ってことではない。著作権は常に意識し、社会悪にならぬよう、生き抜く術を磨くやすりのような存在である。(なんちゅう表現、自分でもびっくりだ。)

 これまでの私だったら昔は…、なんて話をし出すところだったが、今回は自重しよう。

天皇陵は世界遺産などと言う下卑た制度に与する必要はない

 この書込みは今日のテレビ朝日のニュースに反応したものなので、テレ朝はちっとも悪くない。

 タイトルのままだと、どっかの右寄りな方々の発言になってしまうので、急いで取り繕ろう。私は右にも左にも応じない。群れは嫌いだ。嫌われても群れないのが矜持だ。へそまがり呼ばわり結構、変人呼ばわり上等である。でも「何でも反対」ではないつもりだ。

ただの一個人として;

・仁徳天皇陵が世界遺産に祭り上げられたようだが、「嫌だ」。

・学術研究の名のもとに、墓を暴く可能性がある。それも、「嫌だ」。嘘でも本当でも宮内庁に記録がある、とされるのだから「研究」は無駄金である。第一、誰の墓も暴きたくない。

 誰にも明かさない天皇陵は狭い日本に残された最後の聖地である。そのような土地があってもよいはずだ。
開かない玉手箱、と言ったらそれも下卑た表現だけど、解けないパズルのままで良い。真上からの写真なんてのも全く必要ない。Let It Be.
 重要な付加項目だが、それでもこれは「興味が無い」こととは違う。少なくとも今の時代、そして少なくとも私は、我々の「象徴」のことを考えると、いつでも静かな心になれる。それは今は退かれたあのお二方が私の中に培われた根っこである。だからこのニュースは心に痛い。

 少々歴史は足りなそうだが、天皇陵をピラミッドみたいな観光資源にしたいのか? >日本人。