NexDock2

 めでたい話。
 米国Nex Computer社がKickStarterでお金を集めていたNexDock2がこの度完成し、そのリワードが先日届いた。
 ちょっと紹介。

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他のプロジェクトで見たことのある紙質のパッケージ。ミニマル。

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本体。置いている定規は30cm

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わずかばかり古さを感じるデザイン

 NexDock2は同社の、クラウドファンディングにおける第2弾の募集で作られたデバイス。初弾の、同じコンセプトのNexDock(こちらはINDIEGOGO)が成功裡に終了したので、知っている人は知っているだろうが、この製品はノートPC型KVM+α、ってシロモノだ。KVMってのはもちろんキーボード、ビデオ、マウスのことである。その実態は英語版キーボード+13.3インチ、フルフラットのフルHD16:9のIPS+広いタッチパッド。面倒くさい組み合わせなので「デバイス」と形容している。


 これは「ターミナル」でも「シンクライアント」でもない。この製品にターミナルたり得る機能は備わっていない。逆にシンクライアント「マイナス」CPU、あるいはノートPC型「KVM付きUSB-Cハブ」、と呼んだ方が妥当かも知れない。「マイナスCPU」と書いたが、何かのプロセッサは載っていて、ちゃんとファームウェアが動いている。が、そのCPUをOSやアプリケーションを動かすのには使っていない、ってことだ。KVM以外に、それをドライブするバッテリーも内蔵している。当然内蔵KVMも電力を使うが、容量が6800mAhあるので、メーカーとしてはモバイルバッテリーの代用もできるよ、と言っている。

 

 話は前後するが、私が初代NexDockを知ったのは旧プロジェクトが終わった後、ラズベリーパイなどのシングルボードコンピュータ(SBC)を使うのにお手軽な環境は無いかなーと探していた頃。連絡先に問い合わせたが既に在庫は無く、残念に思っていたところ、運よくKickStarterでのNexDock2の募集に気づき、申し込んだ。バッカーとしてはかなり遅い方だったけど。この手のクラウドファンディングでは、失敗する憂き目にあったこともあるが、Nex Computer社は初代を成功させたのだから信用した。私が申し込んだときは1台のリワードでUS$209+送料。プレッジ総額は$50万弱、バッカー数は500人ほど減ったが、金額は前回をちょっと上回ったようだ。おそらく少量を扱う業者が混っているようで、日本でも取り扱いがある。まあ、お値段は2倍くらい。
 その頃には所持していたディスプレイとかキーボードをつないでSBCを動かす環境は持っていたけど、レアなデバイスだし、まさにこんな話のタネに入手してみた。

 NexDock/NexDock2は、KVM「スイッチ」ではないので、繋ぐ相手を変えるにはせっせとケーブルを差し替えなければならない。ケーブル数が増えるのが難点。これを意識してか、付属するケーブルはいずれも短め。でもSBCやスマホで使うときは、内蔵バッテリーが電源になるので、そこだけはUSB-Cで兼用できる。USB-CからUSB-microBのパワーケーブルとUSB-Aに分離するへんてこりんなケーブルを使うのだが。

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ラズベリーパイを意識して給電用USB microBとType A(USB-3?)へ分岐するType-Cケーブル

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付属品。簡単な説明書は気づいたら箱の中でグシャグシャだった

 背景及びどんなデバイスかについてはこれくらい。モノとしてのデキの話。
 まず、全体的に随所に拘りを伺える、かなり良質な仕上がりになっている。
 筐体はアルミ製、画面はフルフラットでちょっと重量はある(実測で1478g)。キーボードは浅いストロークながらしっかりした打鍵感がありMacBookに迫る品質だ。キー自体もあまり見ないもので、キー周辺に少し盛り上がりがある独特の形状。Surface Proのカバー兼キーボードなんか、これに比べるとおもちゃっぽい。液晶の表示も自然で、ドット欠けなし、色ムラとか、バックライトの不良も今のところ無い。
 PineBookで使われているような汎用プラスチック筐体の正常進化形。もうこれで良いんじゃないだろうか。製造は中国だけど(会社はサンフランシスコ)細かい手直しを要求した模様。USB-Cの充電器も終了間際に大容量タイプに変わった。付属する充電器は5v, 9v, 12v, 15v, 20vのPD電源で、電流はいずれの場合も最大3A。

 キーボードの左サイドにはUSB-Cのポートが3個ある。用途は決まっていて、一つは電源入力、一つはキーボードマウスの出力、もう一つはデスクトップモードに対応したスマホにつないで画面を乗っ取ったり、キーボードマウス操作を入力したり、スマホを充電したりする。

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NexDock 2 左側面 ネットワーク系のインターフェイスは無いので最も厚い部分でも18mm(含むゴム足)

 左側面にはもう一つ、標準サイズのHDMI入力がある。そう、これは「入力」。デスクトップPCをつなぐ場合は画面出力はこれにつなぎ、USBをつなぐことで動作環境が整う。私はいつもはコタツトップPC、ファンレス小型のCore-i7機をつないでいる。
 右側面にはUSB3.0のポートが一つ、SDカードスロット、ヘッドフォンジャックが付いている。これらが「+α」の部分である。そういえばスピーカーもこのデバイスには内蔵している。4個内蔵しているらしい。音声入力端子が見当たらないからおそらくこれはHDMIから取り出している音声だと思われる(USBのデジタルアウトを使っているとは思い難い)が、お世辞にも良い音とは言えない。他のノートPC同様、オマケだ。

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NexDock2右側面

 このお値段でこれ以上は無い、つか、他にこんなデバイスは無いのだから当然か。
 ただ、この筐体をベースとしてシンクライアント、例えばArmのLINUXには簡単に転用できると思う。最初のNexDockは、その後購入したAArch64の$100PC、PineBookと外観がそっくり。全く同じかはわからないが、初代NexDockに類似した外殻は汎用品としてたくさん作られているようで、AliExpressあたりを見ると、似た外観のWindows PCも廉価で出回っている。

 バッカー数は2166人だが、宣伝すればもっと売れるんじゃないのかな。台数は幾つ作るのか知らないが、このバッカー数ではクラウドファンディングから脱却するのは難しそうだ。だけど、今はただ「お疲れさまでした」と伝えておいた。