ベンジンカイロの恍惚

 冬のバイク乗りの友、変人回路、じゃないベンジンカイロ。
 中でもハクキンカイロ(Peacockって何だっけ)は温州住まいの私のお気に入りである。
 タバコは吸わないけど、ジッポーで堂々と火遊びする口実にもなっている。

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左からハクキンカイロ、KAWASAKIカイロ、ジッポーライター


 ハクキンカイロの強みは、何といってもその名の由来である白金を使った火口である。なぜか中国経由で入手したKAWASAKIカイロ(バイクのカワサキとは関係ないと思うのだが、パッケージにはカタカナでカワサキと書いてあり、カワサキグッズの中に似たやつがあった。もしかしたらそのコピー品かも)も、火口をハクキンのものにしたら復活。ハクキンカイロの成功は、その火口のサイズを世界規格にしたことでわかる。
 私のハクキンカイロは小型の「mini」って奴だが、KAWASAKIカイロの方が更に小さくて(ジッポーを一回り大きくしたくらい)、手で握って温めるのにはちょうど良い。綿がベンジンを吸わなくなる程度に満たせば、何とか朝の8時から20時くらいまでもつ。歩いたり走ったりするときに手先が冷たくなるのを、これを握って和らげる。まあ、燃料が飛び散るほど入れるとやけどくらいじゃ済まなくなるかも知れないので、いつも少なめにするよう心掛けている。


 化学式的に燃焼と何が違うのかよくわからないが、原理的にはベンジンを燃やしているようだ。ベンジンを燃やしてCO2と水に換えている。その燃焼を、触媒の白金が維持している、ってことらしい。でも、時々点火の後に火口の繊維の裏側が薄っすら赤くなるのは、ほぼ炎なのではないか。また、元KAWASAKIカイロに付いていた火口をよく観察すると、繊維表面に微小な炎が赤く上がるのを目視できた。ベンジンをしみこませた綿なら容易に燃えるだろうが、綿自体が焦げたりしないのが不思議だ。ろうそくの芯として機能したら多少綿が減りそうなものだが、それがないのはやはりいつもの炎を上げて燃えるものとは異なるのだろう。いや、白金が酸素を吸着して云々って記事は読んだことはあるが、触媒があって燃焼が遅くなるのが不思議。

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ハクキンカイロの火口をKAWASAKIカイロにつけて点火。すすけた表面の裏からほんのり赤い炎?



 実は白金を触媒として使う例は、私がベンジンカイロを知る以前にもあった。模型用エンジンのプラグである。あれは燃料の爆発自体で赤熱して(最初は電池で赤くする)、次の圧縮で勝手に燃焼条件が整うとまた爆発を起こすのかなーと想像していたが、どうもそんな単純な話ではないらしい。片や「緩慢な」燃焼、片や爆発。何も減らない「触媒」、でも繰り返すと劣化するの?
 とまあ、そんな少し謎なところも惹きつけられる原因の一つだ。

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カイロの火口(裏側) 左がKAWASAKI、右がハクキン

 懐炉と言えば、昔おばあちゃんが幅広のメガネケースくらいのビロード張りの金属ケースに、太めのろうそくくらいの桐灰の炭を二本入れ、冷たい布団に入っていたのを覚えている。今思えば、それよりもベンジンカイロの方が温かいけど、寝るのはどうかな。下敷きになると、ケースが変形したり、ベンジンが漏れてしまうことはないだろうか。
 その桐灰からアルミ箔っぽい袋に真空パックされたカイロが発売されたのだが、それが私が最初に見た使い捨てカイロである。当時は「使い捨て」なんて接頭詞はついておらず、一個千円くらいするもので(と言っても誰かからもらったものだったと思う)、もったいなくてずっと使わずにいたら、あれこれと進化して今のビニール窒素?パックの使い捨てカイロに切り替わった。ある日、忘れていたそのアルミ箔っぽい袋に真空パックされたカイロを開いてみたら、全く暖かくならなかったのも遠い記憶である。

 ただねー、ホントのことを言うと、バイクに乗る時はあんまり使わない。エンジンヘッドの方が簡単に熱くなるし。Vmaxだと容量4.7Lのオイルヒーターだね。あ、ミッションオイルと冷却水も温まるのか。