特急路線を廃止する方法

 時々使うJR九州佐世保線、博多-佐世保間の特急みどり。
 いろいろ問題のある路線である。

2019年10月3日 みどり21号
「車両点検のため車両編成?変更を行って、(いつもは8両だけと)本日は4両編成で運行しています。そのため本日は指定席はありません。」

 最初の感想は「何それ?」

 列車に車検があることは知っている。でもそれは予定されているものであり、だからと言って車両を減らす、ってのは初めて聞いた。これは理由の説明になってないが、アナウンスはこれ以外のことを喋らない。座席指定券は払い戻される。

 次の思いは「何で指定券売ったんだろう?」昔々、JR発券システムを納入した会社に居た。だからそのような予定は直ぐに織り込んで発券停止にできるのは知っている。私は乗車当日、関西のある駅でそれを購入し、博多のホームでこれを知った。

 次に沸き上がった感情は「怒り」。
 よく考えて欲しい。仕事で交通にお金を払うのは時間を買っていることとほぼ同義である。本来プライスレスの時間が買える特殊で貴重な市場である。座席指定券も例外ではない。何となく上中下の切符(無論グリーン切符が「上」)と解釈される向きもあるが、座席指定の意味はことビジネスユースでは全然違う。JR九州がどういう計算で座席指定券の値段を決めているのか知らないが、座席指定券は列車が発車する直前までそこに並ばなくても座れる、と言う、乗車直前の時間を買っているのである。その「約束」を駅の慇懃なアナウンスくらいで反故にできると思ったら大間違いである。なぜならそれはJR九州が「無い商品を販売した」ことになるからである。単純な話、我々は騙されたのである。だから怒りの感情が湧いたとして何の不自然もないはずだ。

 だからと言って何も糾弾するつもりはない。お金は戻って来たのだし、自由席に結局座れたのだから。でもグリーン車は確保していた、と言うのは納得し難い。そこは乗客を「上中下」で区別する考え方がJR九州内部に残っている、としか考えられない。不公平な扱いであるのは言い逃れはできまい。

 

 まあ、怒りはコントロールできる。駅員がいくら謝ってもこのような運行を決定した責任は彼らにはない。この怒りを鎮めたのは乗客に直面している駅員にもその理由が明らかにされていないからである。たぶん、こうアナウンスせよ、としか指示がなかったのだろう。責任はそう指示した隠れた誰かにある。

 

 では怒りは鎮めて、今回の事件の原因をどう考えるか。二つの解釈がある。
 先ほどチェックしたJR九州のホームページには全く説明どころか、そんなことがあったとすら載っていなかったから、ここからはあくまでも私個人の勝手で矮小な想像である。
(1) 事故。つまり、車検(定期か不定期かわからないが)に通るはずだったが、異常が発見されて代わりの車両が四両しか無かった。これは間違いなく事故である。

(2) 故意。文句を封殺できる(と思っている)西の果てなので、この特急が四両で十分かどうかを検証した。つまり組織的詐欺。

 (1)は車両が壊れているのが見つかった、あるいは通るはずの車検(いや、定期点検では無くて日常点検)が通らなかった、かつ替わりの車両が四両しかなかった。つまりJR九州の甘さが原因。容易で平和な解釈。

 (2)は意地の悪い解釈だが、長崎・佐世保線が、九州新幹線、長崎新幹線計画の陰で廃れていることを勘案すれば容易に思い当たる。まず、九州新幹線。これは博多の先、新鳥栖から分岐する。JR九州としては新鳥栖まで新幹線料金を払ってもらう方が利益になる。そのため、みどりは博多で接続が悪くなった。今日もダイヤ通りなら博多に大阪方面から新幹線が着いた数分前にみどりが発車している。次のみどりは一時間弱(この時間帯の特急はほぼ一時間に一本)待つことになる。このため乗換案内などのWEBサイトではみどりは出てこない。JR窓口ですら指定しないと出てこない列車になった。こうして忘れさせていくのである。


 ちなみに、九州新幹線の乗り換え、新鳥栖駅には「何もない」。数回利用したが、売店も改札を出ないと無い。改札から出ないなら駅員もほとんど見かけぬ無人駅と変わらない寂れようだ。だから時間をつぶすなら博多駅なのである。


 もちろんJR九州は空き席の目立つ列車は廃止したい。それでも長崎県の商工会を中心とする団体がフル規格新幹線を望んでいる。ではまず車両数を減らせるか見てみよう、と言うわけである。新幹線を通せばかもめ、みどりの本数は確実に減る。どのくらい減らせるか。退勤時間の始まる21号で試してみたら、半分でもokじゃん。佐世保線には早岐から分離するハウステンボス号も付いていたが、それも最近見ない。


 いや、JR九州にその調査をするな、と言っているのではない。彼らも民間企業。でも今日の事故がもし故意であれば、あまりに酷い調査方法だ。政治家の皆さん、足元見られてるよ。新幹線の恩恵を受けない県北は寂れる一方だ。

 

 佐世保市はあらゆる面でかわいそうな位置にいる。巨費を投じる長崎新幹線の恩恵は県北には無い。元々、長崎県の県知事の視線は県北には向いていない。県民税の殆どは県知事の息のかかった南部に使われる。有明海の騒ぎ、あの門を開けるのか閉めるのかもめているやつだが、干拓でできた土地はは県知事のおひざ元の農民に与えられ、漁業には補助金が出る。長崎県に限った話では無いが、この国に第一次産業「へ」の職業選択の自由は無い。佐世保市のサラリーマンの方々はどんな思いで県民税を払っているのだろうか。なぜそこに住み続けているのだろうか。企業にとっても「企業追い出し税」の悪名も聞く。穴居人と明治以降の極端な歴史はあるが、公務員と老人ばかりの今に魅力は無い。

 佐世保にはアメリカと日本の軍港がある。そのため西の僻地にしては人口が維持できている(それでも微減らしい)方だが、自衛隊でも米軍でもNHKでも佐世保勤務は「左遷」と聞く。訪問者にはせいぜいAFNが聴ける、くらいのメリットしか見当たらない。米国軍にはすこぶる評判が悪いけど。

 

冒頭に「いろいろ問題」と書いた。他にこの路線の問題は;
・常に遅れる。車内アナウンスが「電車が遅れまして」と謝るのがウンザリ。

・乗りにくい。乗車位置が車両の中央。どうせ中古の使いまわし列車だが、どこに何号車の乗りこみができるのか、ごく小さな標示板にしか出ない。
・トイレが汚い
・2019年10月3日だけだったかもしれないが「早岐->佐世保」は指定券が要らん、とアナウンスしてた。途中に二、三無人駅があるけど、特急料金って一体何?

 

最果ての地、っていろいろ最果てだよね。

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回収された乗車券