NexDock2 vs Mirabook

 つい先日KickStarterで入手したNexDock2のことを書いたが、その後IndieGoGoから、お前が登録していたプロジェクトのアップデートがあったとダイレクトメールが届いた。そのプロジェクトはMiraxess社のMirabookと言う、やはりKVMデバイスを作るもので、そう言えばそんなものもあったなー、と思い出した。アップデートの購読登録のみでバックしてない奴。
 アップデートの知らせが来たのに、IndieGoGoのページを見るとプロジェクトは既に"Closed"って書いてある。つまりそのファンディングサイトでは失敗した、ということになっている。アップデートにはちゃんと書き込みがあって、財政上の問題とか遅延とかで苦労した、集金力の高い、より確かな経営基盤とするためにIndieGoGoから抜けて自分達のサイトを立ち上げたので、そこからプレオーダーしてね、今の優先事項はバッカーの方々に品物を届けることだ、って内容だった(一部意訳あり)。まあ、こんな終わり方は丁寧な方だ。

 NexDock2もMirabookも現在はそれぞれのサイトでプレオーダーを受けている。プレオーダーの価格は前者が$259、後者が$329である。

 IndieGoGoは成功しても失敗してもプロジェクトのライフサイクル管理を建前に、プロジェクトのページは延々残る。なのでそこを(時には他の製品の)宣伝サイトにしているところもあるようだ。無論、お金を集めて作れなくて夜逃げしたチームの履歴も残っている。それがあっても何もしないのがIndieGoGoの運営である。バッカーのためのアクションは一切しない。一部のコメントでは中国人が金とクレジットカード番号をだまし取るためのサイトと言う悪評も聞く。KickStarterの後、さらなる集金のためにIndieGoGoに同じプロジェクトを立ち上げる場合もあり、IndieGoGoとしては後出ゆえにそれを許容しなければならないのだろう。

 今、Mirabookのバッカー達は疑心暗鬼の渦の中だと思う。当初のどのようなリワードが幾らであったのかは既に削除されていて定かでない。私がかなり遅めにバックした時のNextDock2が$209だから1.5倍くらいお高い。プレオーダー価格でも1.27倍。検索すると日本語のWEBページで受付をしているHTLとか言うITコンサル会社がある。つい先月、2019年の12月に受付開始。YouTubeにも200台限定発売開始、とか宣伝があるみたいだが、バッカーへのリワード最優先とある上述のプロジェクトアップデートの内容と矛盾しないのか。いやいや、これこそがIndieGoGo外での資金収集の手段なのだろう。うわ、ここから買うと税別¥48000だ。海外での予約販売価格$329に、高い時で約$60の送料とって為替手数料やら通関の税金(「ちゃんとした」配送業者なら関税込みの値段を提示している場合もあるが?)払うとコンパラなのか。更に国内「販売」なので消費税が1割付いて¥52800、あれ?一部のニュースじゃ税込み¥52000になっている。まあ、イロイロダボダボの誤差の内か。

 Mirabookの経緯は奇しくもクラウドファンディングの弱点を知る機会になった。クラウドファンディングの利点は、すぐ始められる、全世界に向けて投資を促すことができる、の2点だと思う。しかしバックに対するリワードとして開発した製品を返すとなると、それはその製品を欲しい人しか応募しない。個人の額は少なく、時には予定の数百倍集まることもあるが、ほかに類似のプロジェクトがあったりすると競合し、そのサイトだけでは必要額が集まらなくなることも普通に起こる。募集金額をどのように決めるのかはよく知らないが、そのサイト以外でもお金を集めたい場合、今回のような措置をとることになるだろう。しかし、お金持ちのパトロンでも付かない限り、存続は難しそうだ(もちろん開発チームは同意しないだろうが)。更にこの移った先でプレオーダーすると、当然、当初のバッカー達が払った金額より大きいものとなる。「プレオーダー」と言ってもMirabookの場合は製造段階に居るわけでもなく、細々としたサイトでの集金はあまり望めないだろう。
 ついでに付け加えておくと、今回のような製品をリワードとして受け取るプロジェクトをバックすると、それは最も欠陥を含んだロットが返されることになる、と言うことを覚悟しなければならない。

 Mirabookチームの敗因は、当初予定していた金額では作れなくなった、と言うことだろう。見積りの際にサイトからどのようなアドバイス、ガイドがあるのか不明だが、それを誤ったわけである。チームの集金目標は最低で5万ドル、その次が10万ドルで、これがほぼ間近だったんだけど、力尽きたと。つまり、最初の5万ドルでは何もできなかったわけだ。元のプロジェクトはフランス発のものだったようだが、今引き継いだMiraxess社は米国籍になっている。アメリカ人は展示会好きで、その時に人を集めていた風景をいっぱい流して宣伝するのがパターンである。でも米国の展示会ってかなりお金を払うんだよ。今、国内の展示会出品もどんどん割高になってきているけど、米国は桁が違う。「会場屋」の組合も強力で金を奪っていく。ま、入場料も桁が違って、それで主催者は損益ゼロかプラスになるようにできている。たった5万ドルの資金で大規模な展示会に出品すると、プラ部品の金型代にも困ることになるだろう。
 因みにこのチームの最大の目標金額、15M$とかホント夢だわ。リワードも次のプロジェクトの試金石にするとか言ってるが、絶対やらないな。私なら遊んで暮らす。その金持って逃げてもIndieGoGoならザルだし、詐欺に走る動機になる金額だ。

#いや、まだ失敗したと決まったわけではない。バッカーへのオブリゲーションを完遂すれば、こうしたら成功した、というケーススタディにもなる。しかもバッカーにはちょっと遅れて配送する分、完成度も上がる…とバッカーや開発チームは信じている。

 二者を比較。久しぶりにHTML直打ちなんで、うまく打てるかな。

項目 NexDock2 Mirabook
バッカー数 2166 670
バック金額 5000万円 1090万円
プレオーダー価格 $259 $329
募集開始日 2019 March 2017 April
スクリーン 13.3inch1920x1080IPS 13.3inch1920x1080???
重量 1.479kg 1.3kg
位置付け 汎用型KVM+スマホデスクトップモード (ほぼ)スマホのデスクトップモード用
画像入力端子 HDMI, USB-C(ケーブル別体) USB-Cのみ(ケーブル内蔵)
画像出力 なし HDMI
USB-Cポート 3-充電用、画像入力、デバイス接続 2-充電用、デバイス接続(画像入力は内蔵ケーブル)
USB-Aポート 1 2
シャーシ材質 アルミ アルミ
SBCの接続 HDMI及びUSBケーブル ラズパイのみサードパーティ開発中USB-Cボードで対応予定


 どちらも共通なのがマイクロSDカードリーダとφ3.5オーディオジャック。VGAポートはいずれもなし。

 スペック的に見るとMirabookはNexDock2の「機能エンハンス」と言う名の廉価版と言う位置付け(でも廉価じゃない)。ターゲットをUSB-Cからの画面出力機に限っている。現時点では「割り切り過ぎ」かと。今のところ一部の高価なスマホにしか対応できない。その代わり?HDMIポートは画面「出力」になっているんだけど、画面が拡張するのかコピーされるのかよくわからない。一方NexDock2は多少重くてオーソドックスな構成に振っているが、その分、例えば古いデスクトップのコンソールとしても簡単に適用できる。FireStickつなぐもよし。今どきのSBCはHDMI装備かヘッドレス。私の場合は、NexDock2で正解だったようだ。