USB Type C の憂鬱

 電池の奴隷の話

 最近になってようやく私の手元にもUSB Type-C(以下USB-C)の充電ポートを持った複数の機器が揃ってきて、電池の奴隷魂を刺激されたので、夏休みの自由研究的な、充電にまつわるあれやこれやを書こうとした。が、あまりに独自仕様の充電規格が多く、しかも厳密に守っていなくても、適当に充電できてしまうことがわかったので萎えた。

 まず、断っておきたいのは、以下に記される価格感、ってのは全て中華ベースになっている。なぜなら、全ての製品が中国製だから。いやそりゃ安いだろ、と思うのはあなたがお金持ちだからであり、私はこれでも高いと思っている。Bluedioを除いては。

 「揃ってきた」とか言っても、私のUSB-C充電対応機器は、(1)スマホと(2)タブレットと(3)Bluetoothイヤホン、しかない。
 この中でUSB-CのPD機能にちゃんと対応しているのはスマホのみ、と判った。
 スマホは、今会社がどうなっているのかよくわからないFreetelの「雷神」である。これは家人がスマホの会社を乗り換えたので、その特典として\999で購入。いまどきNFCも付いていない型遅れだが、多くを電話に求めない。サイズは小さくして欲しい。
 タブレットは、最近ちらほらとレビューを見かけるChuwiのCorebookと言う、クラウドファンディングのIndiegogoでマーケティングを行いながら開発されたWindows 10 Homeの13インチ?タブレットである。送料込み$499。
 そしてBluetoothイヤホンは最近ここにも記したBluedio TNである。送料込み$9.6
 充電器が付いてくるものはスマホとタブレットだけで、イヤホンはUSB-AからUSB-Cへの変換充電ケーブルのみが付いてくる。これはUSB-Cの充電器を付けると本体価格とコンパラになってしまうと見たメーカーの判断だろう。
 タブレットの充電器は、トラディショナルなACアダプターだが、充電してみるとインテリジェンスの無い12v単一電圧で、ただポートを丸型からUSB-Cにモールドし直しただけのようだ。
 一番ちゃんとしているスマホの充電器は、容量が5000mAhと謳われているスマホの電池容量に対応するように、7v-5vの可変電圧充電器で、PD対応機である。
 で、例によって無駄遣いして、タブレット用の代替充電器としてブロック型の3ポート(PDx1, iQ?x2)充電器を購入。30Wで12v-3.6v可変のもの。外箱は付いてきたが特にブランド名は書かれておらず、ただ「30W PD Charger」と記されている。アマゾンで購入したもので「iPhone Macbook Nintendo Switch iPad Pro」と馴染みの?呪文が掲げてあった。\1800だったが、今は在庫切れ。因みにAliExpressで同等品を探すと送料込みで$10弱くらいから見つかる。外見ほぼ同じものも見つかったが、何故か出力電圧9v-12v/$16.61
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手前にあるのはよくある簡易電流・電圧とその積算計

 箱の外側(説明書は無い)には、各社の唱える充電仕様が連ねてある。但し、この製品はいずれの仕様にも「対応している」とは明記されておらず、あくまでそれらの規格の製品に(運が良ければ)使えます、ってことだと思う。
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ここまでくると、その下の各種企画ロゴも怪しい?

・Type-C PD3.0 - USB3.0以降にのみ標準化されている規格。
・Quick Charge (QC2.0/3.0) - Qualcommの規格だが、本商品に表示されているロゴマークが微妙に違う。今はQC4.0とかなのでちと古い。
・Fast Charge Protocol (FCP) - Huaweiが使っている、たぶん何かの電源チップに由来する規格。
・MTK Pump Express plus(PE2.0) - MediaTek社の規格で、SONYをはじめ割と多くのメーカーが採用している。詳しい紹介PDFが流れている。
・Mode Fast Charge(BC1.2) - Apple規格、と言う人もいるが、USB2.0規格で後からモバイルバッテリーに充電するために追加された部分。
サムソンの規格(AFCだっけ?)には触れられていないので、念のため。

 これらの規格を、いちいちチェックしながら充電し分けているとなれば、それはもう素晴らしくスマートな充電器だが、2000円弱のPD充電器にそんなもの期待するのは間違っている。ただ、12vに対応しているので、上記のタブレットにも適用できる。厳密には、タブレットの12v純正充電器は3A、この無名充電器はPD12vでは最大18Wと力不足だが、時間を気にせず充電すればOSの表示で100%状態にすることができた*。ただ、ちょっとだけ、12vの電圧が低く、電圧計に11.6vと表示される。これは純正が12v強と表示されることに対して有意差があるようだ。逆にただのIQチャージのUSB-Aの口は5.2vと少し高い。
*その後のチェックで、タブレットにハブをつけ、そこにUSBメモリを挿して高負荷のかかるプログラムを流していると、電流が不安定になり、非常にバッテリーがへたっている状態(残り数%でパワーセーブモード)ではプッツンしてしまうことがあった。やはり30Wでは、不使用時や夜間の充電用とみなした方が良さそう。

 で、最初はこの充電器と他の機器の相性を調べようとあれこれ調査項目を決めようとしたのだが、最終的には充電器側の性能比較をした方が、無数にある組み合わせを試すより楽だとわかった。各充電器はどの機器に対しても、同様の傾向を示すようだ。だから、たかが一スマホの充電器とか、無名の上記充電器のことを書いてもあまり人様の役には立たないと考え、詳細を上げるのはやめた。
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Bluedio TN を充電中。無駄な写真を貼っています

 USB-C対応の簡易チェッカーはまだ2000円前後のぼったくり値段(だってその値段でかなり良いマルチメーターが買える)だが、得体のしれないメーカー製のハブとか充電器とかケーブルなどを使う場合には一個持っていた方が良いと思う。私もタブレットに合わせてUSB-Cハブ(HDMI, USB2,0, USB3.0, Ethernet, 充電入力ポート付き)を購入したが、12v充電中に例えばUSBポートに12vが流れることが無いことを確認してから使っている。挿抜の順序で電流の向きが逆転する/しない場合があるので、充電していたつもりだったが全然ダメだった、ってことにならないためにもお勧めです。

 PD充電器、とは言えどアキバを歩けばゴミのように野ざらしカゴ入りで売られている。しかしそれらの多くは5vのみ対応のものだ。あるいは、規格はずれの不良品か。上述のタブレットのような、実は12v単一電源なんです、って似非USB-C機器では使えないかも知れない。
#ただ、上記のタブレットは、何かの拍子に5vの充電状態になることがあるので、もしかしたら5vでも充電可能かもしれない。USB-C -> USB-A変換アダプタで、USBメモリ直結できるし、本体側はただの馬鹿ポートでは無いようだ(そりゃそうだろう)。ま、完全に仕様外の自己責任だが。

 ここにある各社の独自規格とか、PD充電にしても要は急速充電を目的としたものだから、電池に対する負荷はどうなんだろう。充電済の容量に対して電池に優しい範囲で「急速」化するなら有効だが、電池の奴隷でも電池の身になることはできないので何とも。何回まで充電できるか比較テスト、なんて個人には無理。きっと電池メーカーには資料があるだろう。私が持っていない電池のものはたまに見かける。

 個人的にはスマホでもタブレットでも基本寝ている間に充電するので、5時間くらいかけて、フル充電できれば良い。先日も大きなモバイルバッテリーで充電しながらスマホ使っている人を見かけたけど、(持ち物的に)バブル時代の肩掛け携帯電話をまだ使ってる人なんだなー、っと思う。ちっともスマートじゃないよ、使って/使われている「人」が。

 手持ちの充電器の中ではスマホの充電器が最も充電量(積算計で見る限り)が高い。ただ、最大電圧が7vなので、12v機には使えないし、5v機に使う時は電圧超過してないか注意しながら充電しよう。また、充電量が多いってことは、それだけの負荷を電池に与えていることになる。それが良いことかどうか。

 AppleとかExperiaとかに使う純正充電器は更にスマートなものなんだろうが、その「スマート」さは、例えば電池寿命とかの犠牲の上に成り立っていないか、それが気になる。Apple社もかつてと違い、詳細な取り扱い説明書を出さなくなった。
 バッテリーの寿命が製品寿命とすり替えられていないか。そこは各社の「格」によって異なる。