三社詣で 【さんしゃもうで】

 身内のお札(おふだ)の更新時期が来たので、またまた三社詣でを行った。三社の檀家は二、三年毎に一回は近くのお社(やしろ)に参ってお札を更新することになっている。三社とはもちろんドコモとAuとソフトバンクであり、お札とはもちろんスマートフォンの事である。

 この三社詣で、私のお札で無いにせよ、苦痛である。

 情報弱者を無理矢理作り上げて、しかも日本の貧困問題の主原因となっている現時点の携帯電話システムはやはり異常である。身の回りの人々の三社詣でに付き合うのは、コンピュータ業界の末席に連なる物の義務である。

 その身内のスマホは、確かその契約に入った時は格安SIMの会社と言われていたY!mobileだったが、今は実質ソフトバンク、単に音声通話とデータ通信を分離しない、ただの中途半端な電話会社になった。キャリア、とも呼べないだろう。Y!mobileからは、最近頻繁にソフトバンクに乗り換えろと言う広告メールが届いていたようで、ソフトバンクも格安SIM路線を捨てたい、のが実情のようである。
 ドコモにしてもメディアをチョロチョロと翻弄する格安SIM勢力へのカウンター商品(あるいはただのプラン)を発表してはいるが、実際のところスマホサービスのお値段には妥協は無く、さすが王様、同等のサービスで他社より1500円/月ほど高い基本料金である。無論それは「特定の電話機」を使う続けるという前提で他社並みになるようにはしてある。まあドコモは回線のメンテだけで金が入って来る仕組みなので余裕か。
 Auには売り場担当にリベートを払って、実は家の電話会社の変更までも前提とした\1980/月のサービスを押し込んでいる。

 身内の希望に沿って10分間までの通話は定額(決して何回かけても「無料」ではない)、最低2GB/月以上のデータ量、で比較してみると、見事に三社ともほぼ同じ額のお布施を要求される。格安SIMの会社も含めて2500円前後。ただ、何らかの条件を満たした場合に特定の期間だけ割引になるか、会社側が選んだ新しい端末(でもあまり見るところのない)が無料、もしくは割引価格になるところだけが違っている。
 今は新入学、入社シーズンではないが、彼らの得意な二年縛りを契約すると、25か月目が契約更新時期となり、割引の横行するシーズンからは必ず遠ざかるように回っている。今は夏。祭りはやるけどやる気は無い。実質的な、継続可能な基本料の割引は、無い。
 無い、どころか三年縛りをして、最後の一年は標準価格を払わせ続ける仕組みが進行している。

 目の前の餌、つまりタダのスマホや期間限定割引に釣られてはならない。それは本当にタダのおまけに過ぎない。本当に買い替える必要があるのか(新機種を試したいだけだろう)、本当にスマホのバッテリーの寿命は二年なのか(電気自動車やハイブリッドカーは二年でダメにならない)。
 この日ノ本に住まう八百万の神々の中でも、かなり強力と思われるこれらの新勢力に対抗するには(別に対抗しなくてもいいんだけど)、しっかり自分を分析し、正しい選択をしなければならない。「選択」こそが残された権利であり、それこそが二、三年に一度の更新をしなければならないなどと言う盲目的な奴隷志向に終止符を打つ方法なのである。あまりに理不尽な要求に対してはきっぱりNo!と拒絶する覚悟も必要だ。そう、スマホなんて無くても生活できる。

 最近の私自身のお札は、(自分の)厳しい要求に耐え切れずに、機能分離が再開している。
 まず音楽、そしてカメラ、ブックリーダー、関数電卓、電子ノート、音声レコーダー、腕時計。これらは当初、ちゃんとお金を払ったアプリによって統合を図ったが、やはり専用機には敵わない。専用機はそれほど買い替えなくても性能は維持できる。それぞれはさほど上等なものでは無い。カメラなんて何年前に買ったか最早定かではない800万画素の乾電池式だし、ブックリーダーも古くて小さいKobo gloなる電子インクのものだ。今回、唯一アップデートしたのが先頃このブログでもちょっと紹介した3000円弱の音楽プレーヤー。その時々で最も進歩した物を選択する。選択は一度ではない。数々の無駄遣いをしながら、ある程度「以上」と思う物を、でも経済的な理由からあまり高価ではないものを、時間はかけて「選択」する。結果、私のバッグにはそんなガラクタで一杯になる。私の部屋も捨てきれなかったガラクタで一杯である。本当にスマートな携帯電話なんてどこにも無い。

 話は飛ぶが、最近の細長いスマホの台頭で気付いたんだけど、スマホのカメラの縦横比って、伝統的な黄金比でも、製造的に効率の良い円でも正方形でも六角形でもないが、どうしてだろう?どうせ撮ってバーチャルに見るのだから画面サイズに合わせる必要はないはず。某国民放送局で、タダで供出させる細長い画面が、横長の画面に映し出されて見苦しい。そんなお仕着せの仕様は要らない。動画から動的にトリミングする機能を実装すればいいんだよ。>電話ソフト屋。

 もし、次の機会があれば、そのときまたカタログを集めて基準価格を求めるだろう。その時、今回の経験が無駄にならないことを祈ろう。
 そう言えば、携帯電話を解約するとき、販売会社の人も二年縛りは嫌だ、と言ってたよ。>三社電話屋