Muddy stack Vmax

Vmaxの「二輪感」と節度を知る

 いや、Vmax降りるって話じゃない。
 今日、本当に久しぶりにVmaxに乗っていつもの周回コースへ。そしたら道を間違えて台風の影響でかなり荒れた林道を走って…スタックした。
 後から分かったが、前輪が岩に乗り上がらず、それを押すかたちで後輪がスリップ-左スライドし、前輪の岩が山の斜面に埋まって止まった。後輪も同様泥にうまり、林道一杯の斜め状態でスタック。
 この「スタック」って状態だが、Vmaxの場合少し特殊である。それは例のスリッパ―クラッチによる効果で、アクセルふかしてクラッチミートしても後輪が回らない。エンジンの回転数は一気にレッドゾーンまで跳ね上がる。まあ、小刻みに前後しながら…ってのはあるんだけど、重量に対して揺れ幅が小さい。また、前輪ブレーキも前輪が回転しないとABSの効果で効かなくなる。これは非常に不安定な状態だ。前輪がスリップするのでバイクを止めたいのだけど、前ブレーキが効かないわけである。今回は非常に低速な(両足接地)状態だったので事なきを得て倒さずに済んだが、逆に低速であるがゆえに後輪ブレーキを使うことが難しかった。

 で、近くの民家まで救助をお願いに行きました。もう夕方で日が落ちる可能性があったし、バイク屋のネットワーク業者に不案内で不慣れな林道からの脱出を頼むより、この段階なら少人数への短時間のご迷惑で済むかと判断した。時間も明るい内が良いに決まっている。
 道すがら邪魔になりそうな泥や竹や木切れを払いながら行くと、すぐ先にコンクリートの路面が露出しており、今のスタック状態を抜ければ後は何とかなりそうなのはわかった。しかし、バイクより自分の身の危険があった。まず、不慣れなバイク操作と道路作業で息が上がりきった。次に脱水。メッシュジャケットを着ていた分、水分が飛んでいた。そしてライダーズブーツは数分歩いだただけで足が痛くなる(こればかりはどうしようも無い)。ヘルメットとグローブは邪魔になりそうだったのでバイクの近くに置いてきた(これは正解だった)。貴重品の入っていないジャケットも置いてきた方が良かった。

 最初の民家は空き家だった。水道の蛇口があったけどそれを回すコックは抜いてあった。しょうがないので次の家へ。もうクラクラして死にそうだった。やはりバイク乗りは体を鍛える必要があるが、水の携行はどうだろうか。そりゃ無いよりある方が良いに決まっているが。
 次の家には、本当に運よく私と同年代の方のご家族がおられた。まず立て続けに冷たいお茶をコップに四杯も頂き、軽トラで現場へ。バイクはスタンドがかなり埋まっていたので心配したが、無事に立っていた。倒れてたら起こせたかどうか。(「起こせないバイクに乗るな」と言うのはこのような疲労困憊の状態では言ってほしくない。試験の時や常態で起こせても、足場や精神状態で起こせなくなることは幾らでもあるのだ。)
 まだ、九州ならではの日の明るい内で、農家の方のクワとカマに助けられて、10分くらいでなんとか脱出。ご迷惑をおかけしました。
 事故の時もそうだったが、本当にこのような援助はありがたい。対応して頂いた方もゼファー乗りと言うことで快く引き受けて頂きました。

 今回、反省すべき点が幾つもある。誰も興味は無いし、言われてみれば当然の内容だが、自分のために記しておこう。
・大型バイクはもはやポタリング中の道路探索のようなことに用いてはならず、予め建てたルートを正確にトレースすべき乗り物だった。
・近道と言う名前の林道をコースに入れるのもNG。
・足場が悪くなった時点=履いているタイヤに路面が合わなくなった時点ですぐ引き返すべきだった。
・台風上がりだから、木切れが多いんだなーとか一人で理屈をこねて納得する前に、その日はその道を行くべきではなかった。日によって条件は変わる。
・そしてこれらの判断が、今回「予想外に」早く行うべきだったのに気づかなかった。
誤った道の、路面の荒れに対して、バイクを転回させるスペースは一度も無かった、と言うのは言い訳である。

 Vmaxについても、後輪が今回のような挙動を起こすことが判明(たまたま「左」スライドだったのか)。何だか、抜け出した後は、シャフトドライブのためにガチガチに作られているはずのスイングアームが左右方向、とりわけ左側へ振れるような、昔のスチールアームのような感じを覚えた。もちろん試してもそんなことは無いのだが、左右不均等なドリフト傾向を意識しながら乗る方が安全かも知れない。タイヤの接地感への信頼が不意に失われた気がする。
 Vmaxは大きなバイクだ。そして重い。普通の高速道路を走っていると、とてもずっしりして安定している。橋の上の横風も心配ない。でもその実態は所詮二輪車。二つのタイヤとハンドルで曲がる不安定な乗り物なのである。「安定感」は「乗らされている感」だと理解した。

 ただ一つ、頼りになったのは前回の事故の時に得た精神論である。「くじけたら終わり」。
 絶対に投げ出さずに、その場その場で「判断する事」を自覚する。バイクを嫌いにならない。これからもこのバイクに乗り続けるんだ。そんな言葉が、頭の中で支えてくれたのは確かだ。「どうにでもなれ」とか「「なるようにしかならない」ではなく「何とかするんだ」。
 無論、結果的に私の判断の過ちが今回のような他人への迷惑と言うかたちになったのは間違いない。しかし、それを私なりに小さく収めることはできたと思う。


 帰宅して、本当に初めてVmaxに直接水をかけながら洗車した。エンジン部は熱いので厳禁だが前後輪とタイヤハウスを中心に水で濡らしたタオルで泥を拭きとる。リアウインカーのマウントまで泥が溜まっていた。

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疲れた

 このバイクは、ようやくエンジンのあたりが出てきたようで、三-四速くらいで山間部の上下を、エンジン回転数を小刻みに変えながら乗る楽しさを知り始めたところである。
 もっと低めのセパハンにして、丸いメーターを取っ払いたいたいのだけど、自分ではとてもとても。