頭上の空論

BELL Sprint then SHOEI XR-1100 and OGK Kamui


 西日の強い所に住んでいるので、夕方のライディングはいつも夕日に悩まされる。で、この消費税アップの直前のタイミングで入った臨時収入、二諭吉でOGK KabutoのKamuiとAamzonで「よく一緒に購入されている商品」らしい「ブレスガードPro」とピンロックシートを購入した。
 今のヘルメットSHOEI XR-1100(以下X-11)を買うときに、既にインナーバイザーのNEOTECは出ていたが、Vmaxの購入に当たってまずは正統、王道のレーシングヘルメットを、と言うことでX-11にした。でも、やはり日沈む国の住人としてはお天道様の受け入れは避けられない。
 ああ、だからと言ってSHOEI信者ではない。むしろArai頭である。昔々買ったSHOEIは左右非対称の私の頭にはすわりが悪く、偏頭痛がしてた。その点Araiは痛みも少なく、モーメントが小さいせいか、軽く感じた。だが、それは前世紀の話である。もう一度SHOEIを試して、X-11はそこそこ使えると判ったわけである。

 西日の話だった。以前はサングラスのレンズ部が取り外せるタイプ、あるいはそれが開閉できる二重レンズのメガネをかけていたが、最近はなかなか良いデザインが無い。下手な小物に走るよりはと、安い価格のインナーバイザー付きヘルメット、つまりは巷で売れに売れているという、Kamuiが気になっていた。誰かのバイクに引っかかっていたKamuiを見てその小ささにますます興味が湧いた。無論そこはGT-Airに拘りたかったが、SHOEIに約4諭吉を連続で支払うのは意地と神様が許さない。「まあ、お試し、お試し。」と心に言い聞かせながらマウスクリック。上のオプションでもX-11の半額である。

 半額だからX-11とKamuiを比較するのは酷だ、と言う意見もある。でも私はそう思わない。オートバイ用ヘルメット、こと公道においてはTPOと言う見地からも同じ土俵で評価すべきである。コストパフォーマンスが製品の優劣ではない。コストパフォーマンスは優劣を決めるパラメータの一つに過ぎない。ただ二つを比較するのは1と0のせめぎあいになるだけなので、定性評価とすべく、X-11の前に被っていたBELL Sprintも取り出そう。価格的にはKamuiとほぼ同じだが、輸入品であることを考慮すれば中間マージン分、価格的には低位になるだろう。既に生産終了なので海外の通販店では80-90ドル程度で売られている。まあ、海外から買えば送料がかかるのだが。

BELLSHOEIOGK
SprintXR-1100Kamui
安全規格SNELL2005JIS-CSG
価格\19,800\41,820\17,102
購入年200820122014
購入サイズXLXLXL
被ったサイズ感
外観サイズの概観
帽体の厚さ505560
Pinlockなし同梱別売り
視界
風切り音So so×
重さ1694g1696g1594g
あご紐の幅25mm24mm22mm
ベンチレーション効果???まあちょっと…?
*価格はいずれもAmazon、購入当時のおおよその値段。別売りオプションは除く。X-11は柄付なので高め。
*被ったサイズ感は「小」ほどきつい。
*帽体の厚さはシールド開口部上部(額の部分)の実測値。少し甘め。
*SHOEI, OGKの重さにはピンロックシート、OGKは更にブレスガードProを含む。(実測値)
*あご紐の幅は実測値。但し、Kamuiはワンタッチロック…orz
*ベンチレーション効果は頭上のものについて。口元はいずれも違いが分かる。

 私の頭は大きい。きつめのSHOEIではXLを被っている。今回LかXLか迷ったが、まあ無難なXLにしてみた。SprintもXLだったのでサイズ的な比較もできる。Kamuiがもし緩くてもLとXLは帽体は同じ。内装を変えればそれなりに対応できると考えた。

 まず規格。SprintはSNELL 2005、X-11はJIS-C、KamuiはSGである。高い(難度が?コストが?)安全規格に通ったからとて、実際の事故の場合に、より安全なのかと問われればYesと断言できない。しかし、そう問う方々は、自分の命を失う/失いかけるときも「安物だったからしょうがないや」と言う方々なんだろう。製品の安全性とはそもそも統計的もしくは確率的なものである。試験がなくては安全性は全く語れない。だが、実のところその試験内容は詳らかではないし、叩いて潰す、あるいは穿孔するような試験は本来メーカーが何をやってどうだったと明記すべきである。その結果SGには通ったけど、JIS-Cには無理でした、と公表して良いのである。隠すよりもその方がメーカーの良心を感じる。その上でお値段はどの程度です。それがベストな市場形態である。ところが、その検定試験を行っている団体も設立理念とは異なり、決して公共の福祉が目的ではないだろう。その結果得られる試験料、は一過性のものだろうが、供出金と言うか、従量制の「ステッカー代」がきっとあるに違いないと踏んでいる。なぜなら天下り先の利権団体だから。本来ならメーカーが頼まずとも、国内で販売するヘルメットは積極的にテストして結果のランキングでも公開すべきだ。余ってるよ、地方の興行関連の独立法人の人員は。その点SNELLは事故で死んだレーサーの遺族が集めた基金でできている団体だそうで、少しは情に訴えるものがある。

 いや、憶測で脱線しそうだ。

 以前SnellはJIS-Cより難度が高いと聞いたが実際に内容を比較したことは無い、と言うか調べたけどわからない。OGKも別の製品FF-5VがSNELL M2010なる上位(と言われる)規格に既に通っていることを考えると、OGKは試験内容を知っている。そしてここまで売れているKamuiは、その規格の検査が受けられないほど低い安全性だと言うことは間違いない。あご紐がワンタッチバックル式であるのがこの製品のレベルの象徴である。

 次に仕上がり具合。Sprintが圧倒的に悪い。私のSprintとKamuiはともにマットブラックである。マット塗装は弱く、維持管理も大変である。汚れてもできるのは水拭き程度。ワックスもプラスチッククリーナーも使えない。でもしょうがない。歴代の所有バイクがマットブラックだからである。そう、すべてを決めるのはオートバイである。Sprintは「よくあるように」4-5年で塗装がネットリしてきた。特にエアダクトのプラスチック部品に塗られているマットブラックは指を押し付けると指紋が残り、そのうち表面の塗料が流動化してきた。一方Kamui(とバイク)の塗料は意外に塗装自体は薄く、サラサラした感じがする。擦り付ければ傷は残るだろうが、Sprintのような変化は無いと予想される。Kamuiは安いからと言ってもそのあたりに隙はない。

イメージ 1
SHOEIには、例によって無粋なスミを入れました。Bellは最早廃棄寸前。

 機能、まずピンロックが付いていない/付けられないと言う点でSprintは脱落、つか、この時代では致し方ない。しかしダクトの開閉は最も少ないステップ(頭一か所、口元一か所)で済む。X-11は頭に六か所、口元一か所と最悪である。走行中の操作は結構危ない。Kamuiは頭三か所、口元一か所とその中間であるが、口元のダクトが何とレバーの左右操作で、開閉操作の尤度が落ちる。が、このダクト、安全性でSprintに致命的な欠陥がある。頭前方の吸気ダクトと後頭部の脱気パーツがなんと金属ビス留めなのである。吸気側はこともあろうにその吸入用の穴を使ってタッピングビスでプラパーツを付けてあり、これは吸気をしていない、ただの空気抵抗なのである。だからベンチレーションの利き具合もX-11>Kamui>Sprint。

 バイザーの上げ下げは、どれも不満はない。最もシンプルなのはSprintだが、しっかり閉まる、簡単に外せる、風で開くことはない、構造が単純で破損の可能性は最も低いだろう。構造的にちょっと不安なのはKamuiか。ロック部品が細い。対してX-11は上げ下げが軽く、ロックレバーも付いているが、操作は煩雑である。上げ下げが軽い分だけロックが必要、と言った感じ。

 騒音、つまり風切り音は X-11が最も静か。次にSprint、そしてKamui。もちろん風向や風速の状況で変わるが、Kamuiの風切り音は時速60kmを超えると気になり始め、時速80kmではそれしか聞こえない。これは思ったより問題で、運転の集中力が削がれる。ある意味心理ブレーキであり、エンジンブレーキ、空力ブレーキに次ぐ第五のブレーキだと思う(ビビりブレーキ、とも言う)。実際、初めて被った時はトップスピードが1割ほど落ちた。Kamuiは上下左右に首を回す時の空力は考えられており、高速でも特に問題は無いが、左右方向に首を振ると風切り音が増す。インナーバイザーを下げているとその付け根あたりから不快な高周波が出る?

 装着感。先にも書いたようにこれら三つはすべてXLサイズである。SHOEIはガッツリ頭を掴んで高速道路でも揺るぎない。Kamuiは高速道で3桁出すと、ヘルメットが顔の前面に押し付けられるのがわかる。新品にも関わらずこれは緩い。しかし更にSprintは低い速度域でそれが顕著である。つまり、SHOEI<Kamui<SprintでSHOEIが一番ホールドする。内装はKamuiがクールマックスで一番すがすがしい。SHOEIは暖かい(暑苦しい)。その間にあるSprintがなかなかよくできている。ホールドする面積に過不足ない。いずれのバイクもインナーは洗濯可能。

 その他は、Kamuiはニオイがビニール臭い(あるいはホームセンター臭?)ので試しにプラズマクラスターを1時間試したが変わらない。それから「OGK」と「Kamui」のロゴがダサい、のはしょうがないか。

し・か・し

 Kamui最大の売りであるインナーバイザーは素晴らしい仕掛けである。どうせトラックで走ることはないのだから、次からは必ずインナーバイザー付きにしよう。SHOEIの?
 VmaxでKamuiは…正直不安だが、高速道路がコースに無ければいけるかなーって感じ(こわごわ)。

#後日追記
 KamuiのチークパッドをLサイズ用に変更した(あつさが9mm増える)ところ、ホールド感が増し、スピードを上げても顔の周囲だけで風圧を受けるような感じは低減した。しかし、最初は(入れば)インナーパッドの方を変えるのが良いかも知れない。