中華機械時計

安物買いの愉悦

昔、CMやってたからではないが、私は腕時計を曜日によって使い分ける程度は持っている。半分は自動巻、残りの半分は電池式、そして残りはソーラ電波時計である。いずれも底辺の商品で、耐久性はあまり無いが、それでもしぶとく壊れないものが残ってしまう。
手元に残る時計は、まずベルトがメタル製である。ゴム製(ウレタン製?)は駄目だ。どんなに高いGShockを買っても、結局はベルトの交換が縁の切れ目である。唯一残っているGShockは革ベルトだが、これはあまりにも使用頻度が少ないので手元にあるだけだ。
ソーラー電波時計は現代の(準)永久機関である。いずれも日本製有名メーカーの、だがお値段は一万円と五千円くらいの二つ。全く手がかからない。放っておいても動いているし、時間も狂わない。電池切れの心配よりも電池寿命の方が気になるくらいである。

そして中華時計だ。
数えてみたら6個買った。機械式(自動巻、手巻きも可)が5個、電池式が1個である。最も高いのは40ドル程度、殆どは20ドル程度、下は12ドルくらい。紛失1個、破壊(壊れた)1個、最近はコピー品ではなく、一応独自のブランドが育ってきた。海外のブランド品も殆ど中華製の部品を使っている。無論、歯車一つとっても磨きが明らかに低劣である。以前、見慣れない(けどよさげな)形だなあと思って購入したら結構凝ったデザインだったが、しばらくするとそれにそっくりの時計がスイスブランドとして新聞に定期的に広告を出すようになった。順序が逆だったら、コピー品の購入とかで通関時にしょっ引かれて罰金取られるのだろうか。もっとも、その時計、凝った外装で装飾ネジが付いていたけど、すぐにそれらがぼろぼろ抜けたり剥がれ(そう、独特のネジの頭だけが貼ってあった)たりしたので捨てた。

私が機械時計を愛でる理由を一言で表せば…「音」かな。耳に当てるとかすかに響くあの鼓動が、最も過酷で小さな機械として正確に動いているしるしであり、それが(大げさに言えば)職人の腕を最高にふるった結果だからである。無論職人にも上下はあるが。だからスケルトンの時計も大好きである。
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たまたま「当たり」を引いたスケルトン。元気に動く三針。


だが、かなり前、スケルトンのSwatchを買った。三針のベーシックな奴だったが、一年もたたないうちにリューズが折れた。しかもケース開封不可、ってんでそのままゴミ箱へ。今思えば、ベルトだけでも取っておくんだった。
Swatchの印象が悪かったので、中華でも一緒じゃーんって訳で機械時計は中華製の安物を使っているわけだ。思うに、スイス製だろうが、日本製だろうが、大元の部品は中国で産出して、それぞれの国内で磨き、組み立てているだけではなかろうか。

中華時計は安く、雑で、色使いにも品がなく、時計もリストバンドもやたら角が尖っていて着心地が悪い。機械精度もかなり悪い。防水性能を謳っていても嘘である。だが、機械式が5個もあれば通常時は止まってる。使う直前に時間を合わせるくらいの「儀式」はやっても良いだろう。多針はこんな時は面倒だ。

最近、GOER(ごあー?ごえあー? $16.02)とJaragar(ジャラガー? $17.37)、なる中華ブランドの品を購入した。もう一つCurren($13.29)と言うブランドのクォーツも買ったが。クォーツは機械式時計が全く駄目だったときに精神的なショックを和らげるための追加…は半分で、金属ベルトを入手するのた主目的(合わなかったけどね)。ここでは機械式のみについて取り上げる。

型名不明のGOERは四針(内二つは同じ場所を指す秒針)+日付で;
(1) リューズがラジペンを使わないと引けず、時間が合わせられない。
(2) 腕にずっと着けていたにも関わらず、ふと気付くと秒針が止まっている。ちょっと振ったら動き始めた。
(3) 一日に五分以上ずれる(遅れる)
(4) リューズに上下方向のガタがあり、上下に揺らすと文字盤も回る。(内部がケースに固定されてない。)
(5) ゆっくり時計を回しても、振り子がネジを巻けずに本体と一緒に回る。(これについてはネジがいい加減に一杯まで巻けていたから、と言うことにしている。)
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割とつまんない。同じ位置を指す秒針二つって意味が分からない。リューズも使いにくい。


Jaragar は六針で(日曜時分秒+24時針);
(1) 目を離すと止まる。おそらくゼンマイのトルク不足。
(2) しかも振り子が軽過ぎて自動で「巻けない」。
(3) WaterRegistって裏蓋に書いてあるけど、裏蓋がちゃんと嵌っておらず、何と手で開く(開けた)。防水用のOリングはひっそりと細いやつが嵌っているが、おそらくボタン周辺からだだ漏れ。
(4) 使い始めて一週間で秒針が抜けた(笑)。直したけど再発するだろうなぁ。。
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秒針脱落、最低品質のJaragar。でもこのムーブメントって結構多いんだよね。

とまあ、さんざんな状態であるが、この二つをよく見ると同じレイアウトで、部品にも共通の形状のものが多い。裏蓋はWater Resistantの刻印以外、同じ形状である。つまり同じ源流なのだろう。機械時計の基本機構は数種類しかない、と以前聞いたことがある。それ故、独自の機構を持つ時計は高いのだ。ちなみにGOERはWEBサイトは消滅してる。ひょっとしてJARAGARが吸収合併したのかな?他にも似た構成のブランドがあるので、JARAGARすら、正式社名なのかわからない。
中華の良識のために弁護しておくと、機械時計は買ったすぐは調子が悪い。腕に付けて一週間程度は様子を見るべきだ。まあ、油切れじゃ望み薄いけど、機械的な馴染みで各部が堅いことは容易に予想される。実際、ゼンマイを十分巻いていても気づいてみれば止まり、揺らすとまた動き出すと言った程度なら、少々不便だが振りながら継続して動かしていたら連続運転できるようになったこともあった。慣らし運転のようなものだ。ゼンマイの巻き過ぎが怖いなら表スケルトンがお勧め。巻きの状態がよくわかる。
多くの自動巻きは手巻きもできるようになっているが、中華の場合、基本手巻き(特に多針の自動巻きは巻ききれない)と思っていた方が良いだろう。

注意しておくが、これは中華時計を皆に勧めるつもりで書いた記事ではない。中国サイトなどで安物だーと自分では洒落のつもりで買っていると、少しずつ欲が高じて高い時計に手を出してしまうことがある。基本的に通信販売は賭けである。特に海外通販は壊れていても交換の送料を考えるとペイしない。
また、機械時計は数年で壊れる。分解して注油できるスキルを持っているならもう少し寿命は延びるが、中華時計は修理やメンテに金をかけるほどのものではない。使い捨てと割り切るべきである。そう考えていると、たまに「当たり」に遭遇して幸せになれる。

アマゾンで探してみると、ありましたよ。
JARAGAR BCG37 4080円
GOERは同じものは無かったが針の数と文字盤から3280円のものの相当(相変わらず型名は無いけど)品である。
これらには箱と保証書は付いている。
中華便は箱・保証書なし。説明書なし(クォーツには付いていた)。ビニール包装、時計本体部のみプチプチ巻きだった。

おまけ。これは非売品のクォーツ。
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永らく磨いていない部分がサビサビである。机の中のゴミ。オリジナルベルトは…どこかに。