June Riderの暇つぶし

ファッションなどおよそ私にはほど遠い話題だが、それをバイクの機能部品と見なせば参加できる。

陳腐な表現だが、「風になる」のはライダーのよくある特技の一つである(笑)。しかしその実、四輪を運転する方がよっぽど風を感じることができる。と言うのもライダーの服は季節どころか、日々異なる天候を中和するために存在するからだ。ありとあらゆる矛盾を引き受けてライダーを護るのが、ライダーの正装である。そこには「季節感」などと言う風雅な響きは全く必要ない。

だが、正直、この暑さはしんどい。
この季節、一体どんな成りでバイクに乗ったら良いのか皆様のご意見・アドバイスを賜りたい。もう何十年もオートバイに乗っているが、夏服に関する正解は得られていない。

この夏場を過ごす服こそが最も厳しい矛盾を受け付けなくてはならない部品だと考えている。冬服であれば、完全防風防水でまだ選択肢はある。しかし夏服は違う。ライダーを熱気から守るため、風通しをよくし、湿気を発散すると、ジャケットの布地は薄くなるか、厚手だがメッシュ地になる。それは転倒時のプロテクション効果を減殺するのは勿論、風通しが良くなると、長時間のライドは疲労しやすくなる。その結果、結果部分的に厚手のナイロン地を用いたメッシュジャケット、と言うのが最近の私的なチョイスになる。少し前まではボタンにより開閉できるダクトが付いたジャケットばかりだったが、涼しさを選ぶならメッシュジャケットの方が手っ取り早い。もちろんそれらには最低でも肩や肘を守るプロテクタが内蔵され、ロングツーリングにも対応するためにウインドブレーカーや合羽の機能を持ち合わせたインナーを合わせられるようになっている。そう、オプションはアウターではなくインナーになってきているようだ。

無論、本革ジャケットメーカーも頑張っている。革は文字通り第二の革であり、そのプロテクションは何よりも優っている(と言われているが比較したことは無い)。夏場は一般的にはパンチングレザージャケットとなる。古くからある素材だけに、そのデザインもオーソドックスなものが多い。いや、常に新しいデザインが考案されているのは理解しているが、一般の服飾界で言えばクラシックであり、新素材を用いた装いほど、その変化は気づかれにくい。
レザーは少々お高いし取扱店も限られ、地方住まいでは気軽に試着してサイズを見るなんてことはまずできないので、私的にはナイロン製のジャケット、と言う選択になる。

雑誌などにジャケットの安全性について比較実験記事を望むのは無理なんだろうか。提灯持つだけの出版社ばかりで、ジャーナリズムの責任とかけ離れたレベルで広告主に頭を下げるためだけの記事って、ただの広告じゃん。以前は某誌でバイク用チャンバーの比較記事を載せてた時期があったが、あれはめったに広告を載せない弱小のプライベータだったからなんだろう。

繰り返しになるがこの季節、いくらメッシュ地だろうとも関係ない。下着代わりのTシャツに直接ジャケットを羽織っても暑い。メッシュジャケットは走っている間は良いが、信号で止まった瞬間体温が急上昇する。また、走行時の体表面から出る汗を急速に蒸散させるので、こまめな水分補給は不可欠である。挙句、体表温度が乱高下し、とても疲れる。もう安全性なんか全く考慮することもできず、ただプロテクターを保持するだけのジャケットになっている可能性が高い。その服の安全性はコケてみるまで分からないからだ(笑)。メッシュ地の耐久性比較なんぞ個人でできるはずないが、私がほんの少し体験した範囲でお勧めなメッシュジャケットは進行方向に向いては普通のナイロン地のものである。全メッシュの場合、例えば腕は体積に対する皮膚面積割合が多いので、汗の蒸発による体温低下が局所的に低くなり、お勧めできない。
他のライダーの方々がジャケットの下に何を着ておられるのか興味がある。私は元々肌着に長袖シャツ(ポロシャツのような生地のもの)だったが、やはり汗だくになるので、家を出たとき「あ、ダメだ」と思ったら肌着の上に直接ジャケットとなる。その場合、シャツは長袖でやや厚めの生地になるのだが、これがなかなか無い。
そこで最近見つけたのが

おたふく手袋 Body Thoughness Power Stretchi JW-635

って肌着である(手袋じゃない)。機能面からメッシュジャケットに合うシャツを考えると、まず、長袖ハイネックであることが求められる。なぜならジャケットの袖や襟を直接肌に当てないためである。ジャケットはそう簡単に洗えるものではないので、シャツ側で最も汚れるその部分をカバーしなくてはならない。できれば厚手の生地で。そして無論メッシュ通風性を損なわない。この商品は特にライダー向け、ってわけではない。コンプレッションシャツ、と言う肌に密着するタイプである(自分の体形の丸さを見て絶望しかけた)。でも、冷感・消臭、サイドはメッシュ、でも生地は目が詰まっていると言う不思議な素材で、これらの特長はメッシュジャケット向きと言えないだろうか。実売価格で一枚千円程度。着てみると確かに皮膚が大気にさらされているような涼感がある。
因みに「バイク用」として同様のインナーは販売されていて、それらはきっともっと良い製品だろうが、通販ベースでおおよそ7000円台である。

でもって、メッシュジャケットを着こんで(つまり肌着+ジャケットだけ)走り出すと確かに素晴らしく涼しい。涼しいってことは、上記の体温の上下で疲れる、ってことでもあるし、また汗に関しては吸湿する、と言うよりも肌に密着する分、外部に積極的に染み出させて気化させる(てことはやっぱり襟と袖は汚れやすいのか?)。でも今年の夏は、このペアで乗り切ることになるだろう。

さて、では下半身はどうか。
こればっかりはジーンズのみである。過去には革製品も購入したこともあるが、まだ体形が変わり易かった時期で、高価な買い物だったのに長くは着れなかった。バイクの重さは五割増しになったが、服は変わらない。まあ、巷にバイク乗り用のジーンズもいくつか発表されているが、選択するサイズは限られるし、まあ、コケたら耐擦過性、貫通性とも変わりないだろう。多少のクッションによるプロテクション効果は期待できるが。
でもま、できるだけ分厚いものを、できれば膝程度にはプロテクタ入りのものをお勧めする。私の身内が以前コケ、エンジンの熱もあって骨が見える程度の事故を起こしている。
あ、でも靴だけはライダー用のちゃんとした奴である。Elf一筋。

イメージ 1 ただ、ライダーファッションのどんな部分でも、オートバイメーカー並みに本気で「開発」を行っているメーカー製以外を買う気にならない。メーカーは全力で安全性を確保する。ライダーは命がけで、安全運転をする。メーカーの熱意と、ライダーの熱意に水を挿すような衣類には存在理由が無い。
かのコミネのユーザサポートは何と私の要求するジャケットは作れません、と泣きを入れた。無論そればあまり関わりたくないクレーマー向けの方便だとはわかっているが、この発言はコミネと言う会社の不真面目さを象徴している。彼らが作っている者は安いけどライダーの機能部品ではない。
今年は三社ほどジャケットを取り寄せたが、最後に残ったのがRSタイチの「クロスオーバー メッシュジャケット」。デザインは今一だが、おとなしく、機能面ではよく考えられている。難点は重いことと、この会社特有のチェストパッドの取付方法かな。チェストパッドは別売り(大抵のメーカーも同じ)で、数個のスナップで内側に留めるのだが、前のファスナーを閉じないと、ハンガーにかけても型崩れし、最悪は安物のハンガーの角で内側のメッシュ地を痛める可能性がある。重いのは肩肘のプロテクターが原因だと思われるが、それなら仕方ないかな。背中にロゴが入っているが、それほど目立つものでなく、チンドン屋感も抑えられている。ちょっとサイズ選定にミスがあって、でがいんだけど、ま、そこは通販だしね。

まあ、ここまで拘って、経済的にも結構頑張ったカッコで乗り出すと、Tシャツ、ジーンズ(裾折り返し)、素足にバッシュの兄ちゃんが目の前を中型アメリカンで通り過ぎた…その後もカワサキのDAEGのおっさん、高速ですれ違ったハーレー海苔までTシャツかよ~ orz