ノミの心臓の考察

まあ、新車と言うこともあって防犯には気を遣う。四輪の時もそうだったが、こう言った装備は最初が肝心である。盗られないまま平穏な日々に慣れてしまうと、後からやろうという気になれない。買ったんだからまず喜び、そして楽しめよ、と言う声も聞こえてくるが、石橋を叩いて渡る心境の小市民なのでちょっと整理しよう。

バイクの防犯策としてはおおよそ次のようなものになるだろう。盗難に対する防護性が強いと思われる順に列挙する(もちろん、これは私の勝手な順位付けだ)。
(1) バイクの鍵。ハンドルロックとかイモビライザーね。
(2) バイクの外付けの鍵。ワイヤーロックとか、ディスクロックとか、U字ロックなど。
(3) 車庫の鍵。南京錠とか、ガレージシャッターとか。
ここでは以上をアクティブ型と分類しよう。この中で(3)に関しては、その作りに応じて第一位にもなり得るが、私の家の場合はせいぜい波板で内張りをした木枠車庫なので、こんなものかと。また、場所を車庫に限定するので、出先では当然効果は無い。
(4) 車体アラーム。
(5) 鍵アラーム。外付けの鍵に付ける(付いている)もの。
(6) 車庫アラーム。
(7) 車載カメラ。…二輪では無い、と思う。ドラレコもこれに入るか?
(8) 車庫、もしくはバイク置き場の固定カメラ。
(9) 盗難保険。
以上をパッシブ型と呼ぶことにする。パッシブ型は機能的には防犯に役立たない。犯罪者に対する心理的な抑止力であり、その力は設置者が得る安心感よりはるかに弱い。カメラ、特に(8)は盗られた後に効果を発揮することもあるが、そのカメラ自体が壊されたり盗まれたりしなければ、と条件が付く。まあ、その存在に気づけば世の悪者はそれを残すことはしまい。
(9)に至ってはアクティブ、パッシブの分類以前に盗られた後の設置者に対する(特にメンタル面の)保護策である。
ではそのコストに着目してみよう。上記の「安い順」に並べてみる。但し、車庫があり、その建設費用は考慮しないと言う前提で。
(1)(2)(4)(5)(6)(7)(8)(9)
ここで(3)が抜けているのは、シャッター鍵なら高いし、ただの南京錠なら安い、と言うやはり価格幅の広い性質のものだからである。そう、可能ならば鉄筋コンクリートの、頑丈な扉の付いた車庫をお勧めする。サンダーバードの秘密基地的なそれなら、バイクのキーも要らないかも知れない。また、あなたの部屋に置く、もしくはあなたがバイク車庫で生活すると言う選択肢もあるが、排ガスで死なないでね。

まあ、それは置いといて;

効果の高いアクティブ型は比較的安い物と言えるだろう。まずはこれらを確実に実践することだ。
パッシブ型の施策もあてはまるものがあるのなら適用するに越したことはない。だが、極端にコストパフォーマンスの悪いものがある。(9)である。
盗難保険は所有者の心理的な支えではあるが、実は支払い条件がかなり厳しい。私も入ってわかったのだが、かのあいをい損保のそれは;
(a) ハンドルロックをかけていること。
(b) 所定の外付けの鍵鍵をかけていること。これは(2)に分類されるもので、支給品。漫画で犬が咥えている骨をスチールリンクにして何本か連結したようなもので、ニートに畳めるようになっている。表面は薄いプラスチックのコーティングが施されているが、結構堅い。以降、ホネホネロックと呼ぶ。
(c) 車体が完全に盗まれていること。
である。
支払われる金額は年式に応じた同じバイクの減価償却分を差し引いた額であり、また、支払われるのは同じ車種を購入する場合に限る。そう、どんなにその個体に愛着を覚えても、また珍品パイクの場合でも、経済的な支えと言うには無力、と言うのがこの商品の特性である。また、サスペンション、タイヤ、レバーだけ盗まれた、って場合には一銭も出ない。
例えば私のVmaxの場合、初年度ではあるが、一年以内に盗まれると約80万円(特に諸費用が重いのである)支払って新しいVmaxを買わなければ「ならない」。中古車が殆ど出回っていない車体でもあり、これはとても利用者のことを考えた商品とは言えないのではなかろうか。>あいをい損保
それに、ホネホネロックのデザインが、持ち歩けるようにできてない。一応しっかりしたバッグは付いてくる。でも重いしかさばる。車体のどこにも積めない。大きなトランクを装備したクルーザーなら話は別だが。尤も、この鍵を使わなくても更に倍くらいの金額を払えば済む道もあるが、それでも利用者のことなど考えていない商品ではなかろうか。>あいをい損保。
まあ、「ふーん、入りたいんだ。じゃあj条件△△で○○円ね。」と言った弱みにつけこんだ商品でも、私のような小市民は購入するのである。
曖昧に終わるのも批判だけじゃんと言われそうなので言葉を足せば、ハンドルロックプラス別の鍵をしておくこと、の条件は呑める。でも鍵の選択肢が欲しい。あの鍵ではホイールが傷付くのである。その場合、保障はするのだろうか。説明書に書いてある巻き方はどれもブレーキディスクを全く考慮しないもので、それは命に関わる記載であることを自覚してるのだろうか。更にこのロックは、短くて何か地面の固定物に巻きつけるのも事実上不可なのである。
ゴジラロック(こいつも持ち歩きは難しいが、ホネホネロックよりは軽い)とかクリプトナイトがホネホネロックより劣るのだろうか。キーはディンプルにすらなっていない。鍵穴の防護も無い。鍵の強固さを示す耐ピッキング性能(自信があるメーカーは公表している)は1分以下と予想される。

つまるところ、あいをいの盗難保険は残念な商品、駄目である。減価償却と新車価格差で、折り合えるのは来年あたりまでのようだ。だからと言って他の選択肢は知らない。また、同時に入っているあいをいの任意保険も制約が26歳以上なら誰が乗っててもいいよ、てな具合に甘く、今や主流のリスク細分型では無いのである。もっと搭乗者限定して安くすべきである。盗んだ奴が起こす事故なんて知らない。(そのような選択肢を残しておくと被害者に泣きつかれてしまう。そうなると、かの国家権力からも保険を出す方向で手続きするよう圧力がかかり、心情的には犯罪者の仲間にされた気分になる。)

上述した中で、イモビライザーの効果は絶大である。今の軽自動車に付いているそれは効果的なアクティブ型であると同時に大きな安心感をもたらしてくれる。もし、イモビライザーの暗号部分をマスクしてECUを書き換えてくれるショップがあるのなら、(まあ、そのショップが売っているプログラムの質にもよるが)イモビライザーはマストな選択だと断言する。残念ながら米国仕様には無いし、R-ECUにも当然そのような機能は付いていない。米国のショップの書き換えサービスでもイモビライザーに対応した、と謳っている所は見当たらない。米国版では本当にイモビの設定は無いのだろうか。EUにはありそうだが、今度はショップが探せない。

バイクの盗難予防は、強力で、安くて、軽い、ものに尽きる。アクティブ型の鍵、特に外付けのものは少々値が張っても盗難保険よりは役に立つ、と言うのが私の結論である。

私が何年も私情を殺し、あくせく働いて、やっと辿り着いた一台。それを一瞬で奪ってしまう犯罪者の心理は全くもって理解できない。その現場に居合わせたら…殺すつもりで襲いかかる。