みかんのこだわり

 私の故郷は温州みかんの原産地である。この「温州」って、Chinaじゃないのさ。ひょっとしたら「温州みかん」ってブランドがあるのかも知れないが、まあ、ここじゃ、伊木力、西海などのその近郊で採れるみかん一般のことを指すものとしよう。
 
 子供のころからこの季節になると、一日何個も、そう、手の指が黄色くなるまでみかんを食べる。関東に居た時期は近くのスーパーで買うみかんはあまりに小さくて味も悪く、進んで買おうと言う気にならなかった。しかし、実家から箱で送られてくるみかんはやっぱり何個も食べる。
 みかんは、あるときは箱に盛られ、あるときはテーブル上のかごに盛られた状態から手にとって食べるのだが、どのみかんを食べるべきか、手触りでだいたいうまいみかんを選べるようになる。と、言っても、最後に残るうまくないみかんも自分で食う羽目になるんだけど。
 みかんの食べ方は十人十色。科学的には全く根拠の無い自己流だが、うまいみかんの選び方でも書いておこう。
 
 まず、皮のハリ。一部のみかんには実と外の皮の間に空気がはいっているのが普通のもあるが、取り置き時間の長いみかんは水分が抜けて実もスカスカになっているものが多い。みかんの皮が張っているのは水分の抜けが少なく、瑞々しさを保っていることになる。
 次に柔らかさ。皮の厚さは品種により異なるが、その柔らかさが均一でなければならない。どこかが極端に凹むのは傷んでいる可能性が高い。そこだけ水っぽいのは完全に駄目。逆に表皮に水気がなく、カラカラなのもアウト。手のひらに乗せて大きさの割りに重い方が良い。皮が硬いのは酸っぱい。
 
 裏側の、皮をむき始める部分の窪み。普通の人ならここに親指を差し込んで皮をむき始めるところである。この窪みが無いのはすっぱい。親指の腹を当てたときに、しっとりとカーブが密着するのが望ましい。
 
 みかんを買うときは、大玉に限る。だいたい10cm以上のものが甘くておいしい。小玉みかんも大玉みかんもむく手間は同じなので、成果が大きい方を選ぼう。同じ品種では小玉の方が甘いと言う説もあるが、個体差の範囲内である。
 
 みかんは、青いうちはやっぱりおいしくない。均一なオレンジ色のものが良い。
 
 箱で買った場合、箱の底面のみかんはやはり受ける重さのせいで傷みやすい。なるべく底の方から食べることを勧めるが、その瞬間に一番おいしいのは底にあるとは限らない。家族の誰かにまずそうなみかんを残すか。
 
 さて、皮をむいたら食べなくてはならない。通は白い繊維を含めさのうの皮ごと食う、なーんて言われているが、私の場合、やっぱり雑味の無いみかんを食べたい。このためには、まずできるだけ白い繊維を取り除く。さのうを切り離してやはり繊維を取り除く。この段階でさのうの薄皮ごと食べるかを決める。中身が不幸にして未成熟だったり弾性がなく硬い実の場合、私はさのうの薄皮もむく。半月上のさのうの直線の辺の中央部を噛み切る。そこから左右、つまり円弧の左右の縁に向かって細く皮を裂き、半月状の薄皮をむく。つまり、夏みかんと同じような手順だ。これでみかんの缶詰状態になる。
 さのうの皮がごく薄い場合はそのまま口に放り込む。しかし、大玉のみかんでそんな良いものに出会うのは年に数回である。さのうが小さいと、その皮をむく手間が損した気になる。
 食べた残骸は外の皮の中に収めて包み、上下逆にしておくと散らからない。
 
※上記の「さのう」の使い方が間違っている。つぶつぶジュースのつぶが「さのう」らしい。しかし上記では外皮をむいたあとの小分けの袋のことを言っている。
 
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