普段着のバッグとナイフ

 最近、誕生日のプレゼントと言うわけで、親から某大手通販会社のカタログを渡され、好きな服を選べと言われ、まあ折角だからと遊び用にカジュアルバッグを一つ所望した。服は合わないと嫌だし、コダワリに見合う服なんてカタログに載っていないし。
 グローブ革の1万円くらいの中国製、と言えば通販好きなら製品を特定してしまうだろう。何やら聞きなれないブランド名が表面に圧してある。まだ素材は健在だが、デザインが売れ残りよろしく、細長い携帯電話入れが付いている。この携帯用のポケットを装備したバッグは数あれど、そこに携帯電話を入れられたバッグを見たことがない。私の手持ちのスマホでも使えない三流デザインである.。
 
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 だから割安だった、とも思えなかったが、そのポケットを利用する意図あって選択した。グローブ革、と言うなめし方があるのかは知らないが、それは確かにグローブの匂いがする。厚手だが柔らかく軽い。まあしかし、それ以上でも以下でもない。縫製はもちろんミシンだが特に問題なく、コバ面も塗ってはある(磨いてない)が、ちょっとチャックが多すぎる。この手のバッグには何かの原型があるのか知らないが、いつもペラペラ薄いものしか入れられない仕切りのためのチャックが付いている。このバッグの場合バッグの内側と外側に一つずつ。特に外側のものについてはバッグの強度面で欠点になると思うのだが、まあ、Made in Chinaの型遅れに多くを望んでもしょうがない。
 細かい話だが、ジッパーに付けられる引き紐(って言うか、指で引っ張るところのひらひら)が如何にも「端切れ使いました」ってな感じで、やはり三流どころである。その金具類についても一般の手芸店で手に入るもので、ブランドのロゴも入ってない。まあ1万円程度の革製品では金具の特注品は付けられないよね。
 久しぶりの革製品。早速ラナバーを薄くひいてみたら茶色が際立ってなかなか良いアメ色になった(初回はミンクオイルの方が良かったかな)。

 さて、私はこの手のバッグには必ず一本のライトとナイフを入れている。何のためかと言われれば、ライトは言わずもがな、暗い夜道や物を探す時に使うためである。ナイフ、って言えばちょっと物騒だが、いわゆる十徳ナイフ、アーミーナイフやマルチツールの類で、それこそ様々なことに使用する。ライトは手持ちの中で小型のLEDライトが賄えたが、マルチツールはレザーマンのクランチ、という奴を新たに入手した。そう、これをバッグの携帯電話ポケットに入れるのである。実はシースごと入れるとサイズ的にぴったりなのだが、革ポケットにシースごとなんて無様だよね。
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 ナイフのことを書くと、風紀上望ましくない、とされる方々もいるが、「風紀上望ましくない」とか科学的で具体的な根拠を欠く物言いをする人のことは聞く必要がない。「私」にどう影響するのか立証できなければ、便利であれば持ち歩くのは私の勝手である。但し、世の中にはルールがあって、それを遵守するのは国民としてやぶさかでない。そう、いわゆる銃刀法の話だ。
 
 それで、ここからはナイフの話に切り替わる。
 
 オトナの良識として、ナイフを選択するに際しては一応銃刀法を意識している。2009年に法律改訂があって、かいつまむと次のようなものである。
(1) 刃体が左右対称形の場合は、片方の刃の有無、直刃・波刃(セレーション)の違いに関わらず55mm以上のものは剣とみなされ、理由無く持ち歩きできない。
(2) 刃体が左右非対称(これは貫通性のことを意味しているのかは不明確)でも刃渡りが60mmを超えるものは理由無く持ち歩きできない。但し、非対称の刃体を背向かいに並べると(1)として解釈される。
(3) 刃渡りが150mmを超えるものは免許なくしては製造販売譲渡と持ち歩きをしてはならない。(でも料理用包丁を買うときってどうなるのだろう。一度くらいは同じ質問をした人が居るだろうに謎である。)
 但し、ここに書いていることは正確ではない。なぜなら、日本の法律はわざとやってるのかと言うほど不明確な条文故に解釈がいかようにもなされ、違法・合法の判断は当事者により異なるからである。だからあなたが上記を読んでそれを遵守したとしても違法となる可能性があるので、私は責任を取らないことを宣言しておく。
 
 シングルブレードを使いこなしてこそナイフ使いと言えるのだが、アーミーナイフやプライヤーを内蔵したマルチツールはシングルブレードの敷居を下げ、様々な場面に安全に対処できる。私はコレクターでは無いが、普通の人より少し多めに持っているかな。でもここ数年は購入していない。以前持っていたガーバーのマルチプライヤーをどこかに失ってしまったので上述のクランチを購入することにしたのである。

 レザーマンでは二本目だが、一本目に買ったWAVEはなかなかできが良かった。製品保証こそ25年の期限付きだが、他メーカーの永久保証と銘打った貧弱なブレードより造形も切れ味も優れており、実際リビングでちょっと何かしたいときに一番活躍する道具である。ただ、WAVEは残念なことにメインブレードが60mmを超えているので持ち歩くことはできなかった。なので今回もレザーマンなのは多少贔屓目があったのかも知れない。
 クランチはプライヤーと言ってもバイスプライヤーで、その他の多くが採用しているニードルノーズとは異なっている。正直な話、日常的に最も使い勝手が良いのはニードルノーズである。まあしかし、ラジオペンチは安物を幾つも持っているし、一つくらい変わり種があっても良いだろう(ってバイスプライヤーも持ってるんだけどさ)。
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 肝心のメインブレードだが、クランチはバイスプライヤーを内蔵することを主眼に置かれていて、他は隙間に仕込んであるだけ。刃渡り50mm未満のセレーション刃がメインブレードである。痛いのはハサミが無いってところで、嬉しいのは標準のドライバビットなどを挿せる六角穴が開いていること。それなのにマイナスとプラスのドライバが中途半端に付いている。レザーマンのやすりには定評があるがそれも短めでやや実用性にかけるかな。ワイヤーストリッパーは加点要素だが全体評価はちょっと微妙。でも見事な設計と、安全なロック機構は間違いなくレザーマン品質である。
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 因みに、ナイフを買うなら米国の値段を見てから。日本の標準価格は倍以上に吊り上げられている。円高の昨今でも、探せば米国の一般流通価格プラス千円くらいで入手可能である。