エンジン模型のレストア(その3)

 ちょっとアップに間が開いてしまったけど、今回はオイルダンパーの再生から。

 このモデルはトイラジや中華模型に多いフリクション型ではなく、れっきとしたオイルダンパーを装備していることが一目でわかる。なぜかと言えば、すべてのダンパーからオイル漏れがあるから…orz.

 オイルダンパーを侮るなかれ。ちゃんと組み上げてこそ、Made in Japanが完結する。ホント日本人って細かいよね。模型用のオイルダンパーが出たときは画期的だと思った。今じゃプラスチックの容器になってるけど、最初は密封された金属製だったと思う。

 車体を支えるコイルバネは、タイヤに対するストローク入力を吸収し、シャーシを一瞬安定させる。しかし、次の瞬間、そのバネに蓄えられたエネルギーが今度は出力され、結果フワフワしたシャーシになる。まあ、人が乗っているわけじゃないし、それでもいいんだけど、はねたものは抑えないと路面とタイヤの密着性に悪影響がある。極端な話、飛び上がった車体が着地し、そしてまた飛び上がるわけだ。
 ダンパーとスプリングの組み合わせを考えた場合、ダンパーはストローク速度と粘性抵抗係数の積の分だけバネへの入出力を減衰させる。つまりダンパーを早く動かそうとすると大きな抵抗となり、ゆっくりした動きはあまり妨げない。だからダンパーなんてコーナリングには影響しない。コーナリング中の姿勢を保つのはバネの役割だ。
 いや、実はMade in Japanがどうのこうの言わなくてもホント、オイルダンパーなんて無くても走る。更に言えば、この手の模型に使われているスプリングは、車体をちょっと上から落としても跳ね上がるほど強力じゃないから、ダンパーが無くてもあんまり影響ない…orz

 ダメだ、気を取り直そう。

 粘性抵抗係数は、オイルのサラサラ感と、シリンダーとピストンの隙間、もしくはピストンに空けられたベンチュリーの面積で決定される。だから同じ粘度のオイルを入れても、ダンパーが違えば異なる特性になる。実際のところ、メーカーによってオイルの提供バリエーションが異なる。

 ダンパーの役割について、この車体に限って気になることがある。
 この車体はセンターシャフト方式の4WDである。センターシャフト式は加減速時の反トルクが車体にロール運動を発生させる。この動きにダンパーは関与するのだろうか。とすれば、ゆっくり加速する場合と、急加速する場合でこのダンパーの利きが違ってくるわけだ。急加速すれば姿勢は安定し、ゆっくりだと不安定…ん、それで良いのか。

 で、オイル漏れの程度だが、手で持っただけで重さの違いがわかる。更にストロークさせると泡が移動する音(ジュッとね)がする。エアレーション型ならばエアが入っていて当然だが(蓋を開けてダイヤフラムが入っていたらNGだよ)、重さが違うのではいずれにせよ分解調整が必要だろう。
 まず外側のコイルスプリングなどを分解してアルコール洗浄、油差し。ダンパーを開けてみると果たしてゴム製のダイヤフラムが入っている。実はこのダイヤフラムも交換時期だったが、いやもう、また部品を探すのは鬱だ。このまま使う。液体との間に気泡なく、密閉すれば良いだろう?

 すでに入っていたダンパーオイルは思ったよりサラサラの緑色の液体だった。まるでクーラント液のような。
オイルは硬さ別に何十種類もあって、どれを選べば良いのか全くわからない。説明書にも記載なし。車体が結構重いから硬めが良いのか?硬いったって#3000なのか#10000なのか#30000なのか#500000なのか。
 わざわざ微量のオイルダンパーのためにお金を払うのがバカバカしく思える。何かで代用できないだろうか。水じゃサビそうだ。灯油ではパッキンが心配だ。ミシン油でもよさげだ。少々サラサラ過ぎの感もある。自動車やバイクのエンジンオイルなら良さそうだ。
 ま、結局下のタイヤと合わせてシリコンオイルを買ったけど(苦笑)、#10000じゃ硬過ぎで、組み上がったサスペンションはほぼ「棒」だった。なんでも、この硬さがサスに使われることもあるが、大抵はデフギアの潤滑グリスとして使うらしい。しょうがないのでサラサラの#500を買ってブレンドした。そう、硬めと柔らかめを二つ買って適当にブレンドすれば安上がり。

 #500と言う硬さは、電動ラジコンバギーでもそれほど硬くない部類に入る。無論、実際の硬さはサスペンションとして組みあがるまでわからない。今回はおおよそだが#10000と#500を1:5くらいで混ぜた。かなり柔らかくなったが#400でも良かったかも知れない。混合オイルは手元にあったAPSのフィルムケース半分程度作る。もうこの濃度のオイルは二度とできないから、これで二本、もしくは四本分の分量を賄えなければならない。

 そして真空引きのためにダンパーを立てる台を作る。適当なダンボールを折り曲げて四角の筒を作り、その一つの面に四つの×をナイフで作る。そこに各ダンパーのシリンダを刺し込んで立てる。
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 チュッパチャップスの棒で攪拌したオイルをまずシリンダの半分入れ、そこでピストンを上下、ピストン下の泡を追い出す。次に表面張力限界までオイルを入れ、静かにピストンを上下する。早く動かすとオイルが垂れるから、一滴ずつ追加するが、まあ垂れたらまたつぎ足せば良い。
 そこでフルストロークさせた状態から3mmほどピストンを戻し、真空引きをする。「真空」と言ってもそれほど大げさなものではない。最も安価に済ますため、食品保存用の減圧ケースを流用した。これならポンプセットでも1500円~2000円程度で手に入る。但し、買うなら深めのものが良さそうだ。今回は短めのダンパーだったから手持ちのもので何とか使用できた。
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 先ほどの台ごと容器の中に入れ、エアを抜く。しばらく放置し、確認する作業を何回か繰り返す。泡が出なくなったらピストンを一番下まで下げて同じことを繰り返す。更にピストンを上下させると裏の泡がまた出るかも知れない。オイル面が下がれば更に滴下し、反復作業を行う。混合オイルは撹拌時にエアも混じるので、真空引きは何度も行う。折角アホくさい玩具のために、真空容器まで買ったのだから最後は気長に一晩くらい置いておこう。もしかするとこんな作業は要らないかも知れないけど。

 最後にダイヤフラムをオイルとの隙間ができないように乗せ(当然このときに表面張力で膨張した分のオイルが漏れるから慎重に拭き取る)、更にアッパーのボールジョイントアームを乗せて、アウターのアルミスリーブをねじ込む。


 で、ダンパーは完成なのだが、ここでわけのわからないことが起きた。スプリングを取り付ける前、ダンパーのみの状態でピストンをすっとフルストロークすると、ゆっくりと、だが確実にストローク長分、戻るのだ。これって普通なの?
 ダイヤフラムとボールジョイントアーム(つまりダンパーの蓋)の間には構造的に少しエア溜まりができる。だからこの体積マイナスα分(全体の1割あるかどうか)戻りがあるのは理解できる。また、シリンダーがプラスチック製だから多少変形し、その戻り分もあるだろう。でもストローク長分戻ってしまうのは何故だろうか。シリコンオイルがひとまとまりになろうとする力で異物であるピストンを排出しているかのようだ。

 誰かこの原理を知っていたら教えてほしい。(マジで)

 因みにオイル成分は「シリコン」とだけ記載がある。シリコンオイルの特性は信越シリコーン社のHPに詳しい。粘性係数の温度変化、耐圧縮性能、分子レベルでのせん断抵抗性能がダンパーオイルとして優れているのはここに記載されているが、上述のようなカタマリとしての形状保持の能力は見当たらない。表面張力ですら控えめである。


 そしてタイヤ。
 こいつの劣化が一番早い。あんまり減っていないのだけど、表面がボロボロと浅く崩れてくる。タイヤって規格がありそうだけど、〇〇と互換性があります、なんて記載はマニュアルやメーカーのホームページでも殆ど見ない。ホイールごとならいくつも流用がききそうなんだけど、まあ、初心者のうちは冒険しない方が良さそう。
 なので探した。わずかに後継機種のタイヤが唯一互換、と書いてある。しかしその機種も絶版になって久しく、メーカーのダイレクトショップにも売り切れとある。某社のショップに二組(計四本)だけ在庫があるのを探し出し、注文した。古いなりの割引はあったけど、こうしてジャンクがジャンクの価格を越えていく…。
 取り敢えずは古いタイヤも洗ってラバープロテクタントを振っておく。(貧乏性)

 落札時の記事にはタイヤがひとつ凹んでいると書かれていたが、届いたときにはみなちゃんと膨らんでいた。と言うことは、一部の接着が剥がれていることになる。ホイール全周に渡ってタイヤを一旦剥ぎ取り、付着物を除去した後、再度接着する。タミヤにタイヤ専用の接着剤があるので使ってみる。
 その前に後部車輪の片側が排気で汚れていた。ホイールの込み入った奥にも汚れが溜まっているが、ここは適当にパーツクリーナーでジャブジャブにして屋外に放置。完全に乾き切る前にウエスと綿棒なんぞでクリーニングする。完全には元の白色には戻らなかったが、べとつきがなくなったのでまあ良しとした。

 上記のタミヤの接着剤は「タミヤCAセメント ホップアップオプションズOP.339」と言う商品名だ。細いノズルが2個ついてくる。思ったよりサラサラで流し込みにはちょうどよい。接着も比較的強力で即乾性に優れている。ただ、古いタイヤの方は流し込もうとタイヤのビードを押し上げると細かいヒビがある。ま、しょうがないね。
 最近のビッグフットのタイヤの製作時にはホイールの内側か、タイヤの外側に小さな穴を穿ち、外気との通風を確保するのが習わしのようだが、このモデルの説明書にはそんな記述はない。取り敢えずは穴を開けずに使ってみる。要はパンパン跳ね返りの大きい走りをしたら減圧するよう穴を開けろ、ってことだ。でも本当はサスペンションが吸収しないければならないのだが。


 そろそろ組立てられるのだが、エンジンとマフラーの間に挟むガスケットがちぎれている。部品価格は数枚で百円程度の代物だが、当然そんなスペア部品は無いので、昔買っていた実車用のガスケットシートから切り出す。当初は丁寧に鉛筆で外形をなぞり、アートナイフで接続面通りの形状を切り出したのだが、暑さが0.5mmもない石綿系シートなためか、いざ液体ガスケットを塗ってネジを締めようとしたら細い部分が簡単に切れてしまった。二回同じことを繰り返した後、要は、排気の通る部分を狭めることが無ければ良いと腹をくくり、挟むと少々外側にはみ出るくらいに細い部分を無くすとすんなりできた。ネジの通る穴は革細工用のパンチで穴を開ける。
…いやー手数のかかる部品だ。
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 ま、ここでちょっと仮組みしてみた。燃料系がまだだけど。車体後部がキレイになってくるとやっぱり前部もオーバーホールしたくなる。
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 組んでみてやっぱりプラスチックの前後サスペンション部分がヤワだと思った。車体をグイグイ下に押し付けると、確かにサスはストロークしているのだけれど、プラスチックがたわんでいる感も否めない。ここいらが入門用と競技用の違いかと。

 そうそう、クーリングファンが前後逆に接着されていたので無理やり剥がして付け直した。
 完成までもうちょっとだ。