エンジン模型のレストア(その2)

 さて、本命の汚れ落としである。
 古来グローエンジンの乾いたシミは落としにくいものとされている。これは潤滑油成分が固まったもので、汚れた直後に落とすのが一番効果的だが、それでも一苦労である。エンジン内外はどうしても汚れる。自動車は排気周りが近いので、マフラー周囲に茶色いシミが堆積している。

 実車のレースの世界で、植物系の潤滑油が使われることはよく知られている。しかし、酸化が早く、すぐに分解洗浄しなければドロドロに固まってたいへんなことになる。これを地でいっているのがラジコンのグローエンジンである。鉱物系もないことはないが、殆どのグローエンジン用の燃料の潤滑油成分はひまし油で、もろ植物系である。それと主剤のアルコール、燃焼促進用のニトロの混合物になっている。

 原理的には燃料をかければ溶けるはず。しかし、それを拭き取らねば同じである。だからアルコールを使ってみることにした。
 まず100円ショップで手頃な小ささのタッパーもどきとミシン油を購入。次にホームセンターでパーツクリーナーと水抜き剤を購入。もしあればペイント売り場などにある無水アルコールの方が良いかも知れないが、私の家の近くの店には置いていなかった。因みに消毒用アルコールは薄いので効果は期待できない。

 パーツクリーナーは800mlの大きなスプレーで、何と160円だった。無論アルコール系である。そして水抜き剤はイソプロピルアルコール。まあ、アルコールとは言っても厳密に同じ成分ではないが、化学のアバウトさに期待しよう。結論から言えば、この水抜き剤でOK。パーツクリーナーはスプレーの意味があまり無いが、容器に汚れた小物を放り込んで、そこにジューっと液が溜まるまで吹き付け、容器ごとガラガラ振って使った。因みに、この容器として使ったのは、自販機で買ったコーンスープの空き缶である。広口で、内側に樹脂コーティングがしてある。充分洗わないと、内側にはスープのぬめりが残るが、それさえ気を付ければ密閉容器としてはかなり良質のものである。

 IPAでの作業は屋外(火気厳禁は上も同じ)。ディスポの手袋着用。タッパーもどきに大物部品、小物部品をなるべく平坦に並べて水抜き剤をどぽどぽ注ぎ、蓋をする。今回エンジンのクランクシャフトが抜けなかった。エンジンにはシールドベアリングとオープンベアリングが、また、車体のフロントタイヤシャフトにはシールドペアリングが内蔵されていて、少し迷ったが、面倒臭いのでそのまま浸けた。シールドされているグリスの抜けはあるだろうけど、まあ、あんまり高価な品でもないし、いいかと思った。パッキン類はできるだけ外しておいた方が良い。

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 下の写真はシェイクはせずに一時間漬け込んだ状態である。茶色の成分が溶け出している。この時点でも歯ブラシで擦ればそれなりに落ちるが、もう一時間くらい漬け込んだ。
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 なお、この方法でも例えばエンジンの砂地の部分についた汚れは完全には落ちない。切削加工をされた部分はほぼ完全に、プラスチック部分も完全に落ちる。ブラッシングは必要だが。
 クランクシャフトが外れないので、その隙間はアルコールが浸透しにくい。ここは外せないなら諦めるしかない。ミシン油を根気よくさして動きを滑らかにする。

 外せなかったゴム部分にはラバープロテクタントを、金属部品にはミシン油をさす。アルコールは脱脂剤だから、浸けた部品を放置するとすぐ錆びる。プラスチックも心配なのでオイルで濡れたウェスで油脂を少々足しておく。但し、走行時に汚れが付着するので、油分はできるだけ拭き取っておく。
 こういう場合に、よく556なんかのオイルスプレーは避けた方が良いと書いている人がいる。あれってなぜ? 確かにオイル自身も酸化するのでサビの元になるかも知れない。でもやらないよりは絶対良い。オイルに浸けたものだって錆びるときは錆びるのだ。グリスを塗っておけば少しはましなのかも知れないが、地上を走るものなので、砂の付着を増進させる。まあ、素手で触ってベタつかない程度に拭き取るのが良いかな。

 次はシャーシである。このアルミ板も、車体の後部だけが汚れているので、そこだけを洗浄する。まず、パーツクリーナーを使ってみた。紙ウェスを当てながら吹き付けて擦る。うーん、効果は無いとは言わない。少しずつ薄くなるのだが、繰り返すのが結構つらい。
 次に、上述のアルコール。これもパーツクリーナーよりましだが、似たようなもので、完全にシミを抜けきれない。
 最後に使った手が、100円ショップで買ったメラミンスポンジ(イワユル激〇ち君とかの類)とピカールのタッグである。平たい板なら、根気さえあればボロボロと落ちる。光沢が他の部分と違ってくることもなかった。基本的にメラミンスポンジは洗剤なし、水のみで使えると書いてある。しかし、水だけでは取れなかった。ピカールは以前ヘアライン仕上げのアルミを磨いたら見事にミラー仕上げになってしまったが、今回は何もなし。汚れだけを落とした。
 マフラーのしみもふき取れた。ここでも光沢がツルピカになることはなかった。
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before
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after
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 やー長い間の疑問に対処できたが、それでもまあ、手にとっては重労働で、あとで手袋を外して風呂にはいったら手のひらが痛かった。

 次回は、ちょっと悩んだオイルダンパーについて話そう。