エンジン模型のレストア(その1)

またまた内向的な話題。模型のレストアと言う地味~な愉しみである。

 先日買った超小型4サイクルエンジンの適用先として、中古のラジコンカーを買ってしまった。ヤフオクで格安物件に安いうちに手を出していたら、安いまま落札してしまった。

 田舎ではラジコンカーを走らせるサーキットなんてないし、たかがおもちゃを走らせるのに金を払うのも馬鹿馬鹿しい。なので、買うのは荒れた路面も何とか走れるビッグタイヤのバギーと決まっている。まあ、田舎でも最近は公園をジジババのゲートボールとか何とかゴルフが占有し、子供の草野球すら許さない状況であるので、騒音をまき散らすエンジンカーは肩身は決して広くない。しかも、こいつは要らぬガキどもをおびき寄せてしまうのだ。ガキどもはエンジンの怖さを知らないので始末に悪い。とにかく好奇の目だけで何を言おうと追ってくる。ガキを集める効果はハーメルンの笛以上に強力である。

 エンジン模型はとても危ない。最も危険なのはプロペラ機だが、これはさすがにガキが居るところでは飛ばさない。ヘリもしかり。エンジンカーはその熱と、ギアもしくは車輪が危ない。コンビニ袋なんかを巻き込むと一瞬で引きちぎる。これが手袋や洋服だとするとかなり怖い。だから公園も基本的に避けているのだが、うちの庭だろうとなんだろうとガキは餓鬼のように湧いてくる。

 あ、いや、脱線した。
 届いてみたら、二、三回しか走らせた形跡のない上物であった。グローエンジン特有の茶色のシミは免れていないものの、シャーシの裏にもほとんど傷が見当たらない。出品者もその素性はわからないとのことだったが調べてみたら、八年くらい昔の某社の某車種だと判明した。RTRとしての(って単にReady To Runの略なのさ。つまり組み立て済みってわけ)販売もなされていたらしいが、無線機は非純正品だったので、組立キットではあったようだ。

 しょうがないなあ。まずは再生してやるか。

 取り敢えずはバラしてクリーニングである。エンジンの積み換えは二の次なのはわかっているが、どうやら既に積んであるエンジンがかなり使えそうなのである。

 で、いやはや、エンジンカーも進んだものだ(と言う感慨を八年前の下級モデルで抱くのもかなり浦島的だ)。それまで私が知っていたのはせいぜいオイルダンパーを装備した四輪独立懸架の4WD、程度だったが、このエンジンカーはそれらに加えてバックもできる。2つのサーボだけで。更にオプションパーツ(ってもう入手できないだろうけど)を見ると二段変速ギアを追加できそうなのである。また、金属製だったサスペンション周りは情けないプラスチックにタッピングビス止めとなっているが、それでも精度は格段に向上している(日本製だし)。更に、これはこのモデルの特殊な機能だろうが、セルモーターによるスターター付きだ。このスターターは電動カーに使う7.2Vの電池を用い、専用のアダプタを介して、後部にある端子に一瞬接続するだけだ。プラグヒートもそれで賄える。
 エンジン付きラジコンカーには、昔から紐を引っ張るスターター付きの物が多かったし、今でもそうだ。(但し、スターター付きの物は、車重よりお手軽さを求めた下級モデルである。)しかし、このセルモーター方式は、結局のところプラグヒート用の専用電池を用意することを思えば、紐よりもかなりスマートである。モーターもそれほど重いものではなく、うーん、お手軽だ。

イメージ 1
セルモーターつき!

 さて本品は、少し工学的な見方をすれば、シャーシの設計はかなりお粗末である。
 まずシャーシ下の構造物が多い。フロントのステアリング機構とサーボ、四輪駆動のプロペラシャフトはシャーシ下に剥き出しである。また、そのセンターシャフトにブレーキディスクが付いているので、これもまた、走行中に破損する可能性がある。
 前後のデファレンシャルギアは密閉されているが、シャーシ上のセンターギアは剥き出しであり、砂を噛む可能性もある。
 ギアはピニオンとデフを除けばすべて強化プラスチック製。潤滑は無し。まあ、オイルレスなのは、砂を付着させないと言う意味でアリかと思うが…本当にいいのか?
 シャーシはアルミ板で、電気仕掛けの部分だけ密閉されているのは良いが、そのアルミがヘアライン仕上げで、クリーニングを考えるとミラー素地のままが良かったのではないか。
 サスペンションは前後ともセミダブルウイッシュボーンだが、そのリンクの上部を構成するのが直径5mm程度のプラスチックの棒だ。

イメージ 2
フロント廻り

 先にも書いたように、どこかにデッドストックでもない限り、部品が手に入らない。まあ、八年前のモデルの小物部品なんて不良在庫に相違なく、苦しい模型屋さん事情を察するに当然の成り行きである。損傷すれば何か他の部品で代用するか、自作するしかない。
 だからネジの一本までもなくさないよう、そこらのケースに小分けしながら分解する。ネジと言ってもラジコンに使用されるネジはかなり特殊だ。例えば3センチ程度のネジでもヘッド側5ミリ程度しかネジが切っていないもの、ヘッド部分がそのままユニバーサルリンクの球になっているもの。プラスチック部へのネジ止めは、ほぼ間違いなくタッピングビスになっているので、本当は外したくない。最低の脱着回数を心がけて失敗の無いよう、分解する。ネジとドライバの組み合わせを見極めることは、最も基本的かつ最重要である。

 今回は全体の調子が良いので、バラすのは油で汚れたエンジンとリアのサスペンション部分のみにした。まずは鳩サブレが入っていた空き缶が、ちょうどよい具合に四分割する内張りがあったので、これを利用して部品を外していく。

 特殊な工具は何も要らない。使ったのはプラスの#2, #3、マイクロドライバセット。あとはプラグ用のソケットレンチくらい。マイクロドライバのグリップは少し太めが良いだろう。

 ああ、工具の蘊蓄はあまり無いが、私は自転車やバイク、クルマの整備もするので、ヘンテコな工具を普通の人より持っている。しかし、数は少ない。セットものを買わず、必要なサイズだけを必要な時に買うから。店で並んでいる工具は、同じメーカー、同じシリーズものでも精度に個体差がある。それを店頭で知ることは難しいけれど、方法はある。
 男の人には、「工具好き」な人が多い。マイナスネジのヘッドにくっついて逆さにしてもネジが落ちない精度とか、六角ボルトの角ではなくて面に線接触でトルクをかけるソケットの秘密にひかれるのだろう。ブランド品もある。でも私は工具は消耗品でなければならないと思っている。そう、「一生モノ」の工具なんて無い。外そうとするネジが壊れる前に自壊するのが正しい工具だ。たかがネジだが、例えばバイクのエンジンのスタッドボルトが折損したら被害は甚大である。どんなに磨かれたレンチでも、ナットを緩めようとして自分の口が開いて噛めなかったら迷わずゴミ箱行きである。それは今後二度と信用できない。

 しかし、それにしても今回ネジが簡単に外れ「過ぎる」。昔エンジン飛行機を飛ばしたときは半端な部分は全て破壊されたのに、この軽さは異常だった。殆どのネジが明らかに緩んでいる。前所有者が組み立てたと思われる部分以外でも。なんとシリンダーヘッドからガスが漏れた跡がある。シリンダヘッドのネジも細いマイクロドライバのままで外れたし、シリンダーライナーもすっと抜けた(これはスチール性のライナーと、アルミ製のシリンダーとピストンのせいだと思いたい)。
 GS製の11クラス。Made in Japanなんだけど、あまりぱっとしないなあ。キャブレターもプラスチック製だし。圧縮は充分あるけど、寿命は長くなさそうだ。まあ、そうしたら本命の4stエンジンの登場である。