底辺付近ののDAC プレーヤー: Shanling M0

 まあ、随分前から話題になっているShanling M0をようやく独身の日のセールで入手した。先に紹介したAGPTEK G6と言う音楽プレーヤーを購入する時にも気になっていたのだが、お値段が諭吉に届いていたのでずっと躊躇していた。G6は個人的には良い機種だと思うが、では32bit/384kHzのDACならどんな音が出るだろうかと。
 今年の5月に販売開始されたものなので、検索すると様々なレビュー記事がある。プロの記事には遠く及ばないが、自分なりに底辺の機器からステップアップしてきた観点でちょっと話題にしてみようと思う。

イメージ 1
手前は比較用単四電池、別売りのプラケース装着状態、後ろの袋なんかは付いて来ません。

 DAC専用機としては以前貧弱な24bit/192kHzのエレコム製を紹介したことがあったが、あれは音が硬かった。単純にPC -> USB -> DAC -> アンプ -> スピーカー/ヘッドフォン/イヤフォン とするだけのものなら32bit/384kHzでも完成品で20ドル台からある。でもPC縛りになるのは嫌だった。

 本体の購入前に音楽ファイルが入手できないのでは意味が無い。CDをリッピングした音源ファイルでは不足である。が、まあ、そこは初心者のサンプラー音源頼み。幾つかの*.dsfファイルをダウンロードしました。頻繁に聞くのはCDから落としたFLACになるだろうけど、この機種でしかたどり着けない領域にも一応目を、いや耳を通しておきたい。

 購入は例によってAliExpressだが、日本国内で売られている革ケースのバンドルは無く、最近発売されたクリップ付きプラケースを合わせて$100弱で購入。独身の日だからって、そんなに安くなるわけじゃない。小市民にとって$100くらいの商品を中国から購入するのはちょっと緊張するが、EMSで速く届いた。アマゾンジャパンなら革ケース付きで1.5諭吉くらいなので、コンパラだと思う。
 尚、この機種、某サイトで倍額のWalkmanよりは音質で劣ると評価されている。

イメージ 2
プラケースを外したところ。きっちり装着できるが、耐久性は不明

 Shanlingと言うメーカーは、元々ハイエンド「っぽい」オーディオ機器のメーカーらしい。Webサイトには廃人級のオーディオマニアなら気になる「形状」(笑)の様々な機器が並べられている。その中でM1とかM0と言う、貧民のためのエントリー機が売られている。でもちゃんとファームの更新やドライバーも整備されている。筐体は当然金属製、機能も、イコライザーは当然、左右バランスも調整可、DSD出力はDoPとD2F切り替えができる…まあ、DoP入力対応機なんて持ってないけどね。ただ、このM0、その前の機種M1に対してスマホのパーツを流用したおかげで低消費電力化と小型化ができたが、アンプ部は、中華製電話並みだと言うことだ。

 まだ完全には使いこなせてないけど、ささっとファームを最新版(2.2)にアップしてインプレッションを書いてみる。

(1) まず、簡単なプラケース。SDカードの蓋がカバーされるところは良いが、クリップしたところから下にヘッドフォンケーブルが延びるので胸ポケット内側には使用不可。上下逆には装着できない。バッグなどのストラップに付けても横を向いたり、操作がし辛くなるので今一つ。
(2) 本体
 SDカードカバーは硬質のゴム、もしくはプラスチック製であまり嵌めあいは良くない。でもここはプラケースでカバーされるのでNP、いや防水性は期待できない。ロータリースイッチはぐらついて耐久性が心配。USB Type-Cのコネクタ篏合はok.
(3) タッチパネル。感度が悪い。特に左から右へのスワイプ(前画面に戻る操作)が利きずらく、何度も指でこすってイライラする。そのくせ上下にスワイプした時のスクロールはとっても早くて、目的の物で止めるのは困難。また、表面はプラスチック?指が引っ掛かって、指紋もベタベタつく。アマゾンでスクリーンフィルムを\980で売っているが、高過ぎ。
 折角ボタン付きのジョグダイアルがあるのだから、もう一つボタンを追加して、操作はそれだけで賄うべきだろう。
(4)音
 ローレゾの耳を持つ私にはDAC自体は問題ない。ノイズの無い、クリアだがとんがったところの無い音。G6に比べると音が少し丸く、耳触りは悪くない。イコライザーも(プリセットだが)バリエーションが多くてそこは専門メーカーと言ったところ。耳に突き刺す感はない。
 イコライザーオフで、密閉性の高いイヤホンで聴くとアコースティックはわずかにこもって疲れる。ヘッドフォンにすると、パワーが足りない。内蔵アンプもしくは電源が少々貧弱。設定したヴォリュームの維持が弱いらしい。聴いていてちょっとハラハラする。(ゲインを上げると少し改善する。)
 まだ、PCの周辺機器としての使用は行っていない。
 気になるDSFの再生だが、うーん、音がソフトになった分、臨場感がちょっと薄め。イコライザーを「ライブ」設定するとちょっと回復する。CDから抜いたFLAC再生では、これ単品では音場の拡がりとか臨場感に今一つ欠ける。ヘッドフォンアンプを併用するのが前提か?今回採用した省電力チップがダメなのか。M0に採用されているES9218PはDACとヘッドフォンアンプを含んでいる。てことはそのアンプ部がダメぽ。でも別体型だったらサイズが大きくなったんだろうね。まあ、単品でイヤフォンなら聴けないわけじゃないので、超小型化の弊害として納得しよう。

 $100の価値が果たしてあるのか。いや、それくらいはかかるのだろう。ファームのアップデートも行われているちゃんとした商品なのだから。PCの周辺機器として使える点も○。G6のコスパが良すぎたのだ。

 人に勧めるか?相手による。普通の人にはスマホ並なので。ちょっとオーディオに関心があって、特にそのサイズを気にして買ってみようかな、と言う御仁には、まあ期待せずに買ってみればぁ、と言ったところ。そうじゃない普通の人にはG6を勧める(使い難さは別として)。
 G6と比べるとどうか。個人的にはM0の音の方が「整っている」と思う。操作性は今一だが、G6の首をかしげるようなインターフェイスではない。FMラジオとかテキストビューアなんて機能は無いが、それはスマホを使えと。音は良く調教されており、聴きやすい。そしてすべてをダメにするBluetoothもサポートしているが、Apt-X, LDAC(持って無いけど)対応なところがせめてもの救いか。
 そうそう、このプレーヤーはマイクを内蔵していない。ってことは、スマホを気遣ってマイク付きのイヤホンを選択する必要がなくなった、というわけだ。

Tips
 M0のプレイリストはm3u8相対指定で読み込めます。ディレクトリ区切りは'\'でok、コードはBOM無しのUTF8。再生はファイルの選択から。

…思うんだけど、こんな、デバイスの細かい使い方を覚えなきゃいけないなんて、音楽を楽しむことから遠い所にあるんだよね。テクノロジーが邪魔。デバイス選びに終始するんじゃなくて、音に没頭することを忘れずに。

※印象は個人の感覚です。$30以下のG6と$100のM0とでは、当然その評価の厳しさは異なります。