調子こいてるSurfaceの国内価格に抗議

Chuwi Corebook

 これまで少しずつ話に出ていたChuwiのタブレットPC、Corebookについて、ここ三か月ほど使ったので少し思うところを書いてみる。

 これはタブレットにしては大型の部類に入る13.3インチのWindows PCである。クラウドファンディングIndieGoGoを通して送料込み$499にて購入したものだ。いや、在庫のないものにお金を払う点では確かに投資と言える。
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キーボードを装着したところ。青い布は別に購入したマイクロファイバーのふき取り用。

 このPCに限って言えば、分離型のキーボードを使う点で、タブレットとしてもデスクトップとしても使えると言う意味で2-in-1タイプと呼んでおり、決してAndroidとWindowsの二本立てではない。付いてくるWindows10はHome Edition 64bit版である。似たような形態としては、鼠コンピュータの何とか(型名覚えていない)とマイクロソフトのSurfaceシリーズが国内では有名かと。
 このIndieGoGo版のスペックは次の通り。
 CPU Intel Core-M 7Y30 Kaby Lake, MM 8GB, SSD 128GB, dual-band wifi 2.4G/5G, Fingerprint, 34.2Wh battery, 1024 level pressure-aware active stylus, 13.3 inch full HD display.

 私がこれを購入したのは、縦型にしてA4サイズのPDF書類が読めること、それに書き込みができること、が目的だった。後者はまあ、アプリケーションの話でもあるので除外できるが、ペンを使えることが望ましい。しかし、その用途や、普通のパソコンとしての使い方を含めて、最初に言ってしまうと、「あまりお勧めできない」。

 まず、Chuwiのこの機種に限らず、このスタイルが、と言う意味で;
(1) 重いタブレット部が自立できない/できても不安定。文字通りラップトップでは安定せず、「寝ながら使う」には不格好なフレキシブルネックの大型スタンドが必要である。立たせるための脚はSurface Proには裏側の下半分がヒンジで足の役を担うことができるが、その細い線接触と直交する膝の上ではやはり安定しない。
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CoreBook3 キーボードだけがマグネット装着
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Surface3 Pro3 キーボードと電源ケーブルは磁石頼み

(2) 本体に比べ、不可欠の構成要素であるキーボードが脆弱。バッテリーに加えてキーボード部も製品寿命を決める要因となる。おそらくキーボードだけ継続販売、なんてことはないだろう。ただ、Surfaceならサードパーティからも出ているのでちょっと安心。
(3) キーボード連結、物によっては電源コネクタ部にもマグネットが使用してあり、屋外や工場での使用が想定されていない。いくら内部がマグネットフリーになったとしてもこれはあんまりだ。砂鉄の餌食になると言うことはショートの原因とも言える。…何をいまさら、だがAppleにせよ、Microsoftにせよ、これまで散々HDDの世話になっておきながら、手のひらを返したように磁石を埋め込むとは。まだ机上にはポータブルHDDなんてのもあるのに。
(4) タブレットである(笑)言うまでもなく、一枚板のタブレットは非エルゴノミックである。ジョブズの負の遺産である。片手で持つ場合、親指と他の指の間で板をつかむのなら問題ない。もちろん親指の静電気が反応してしまうので、そんな人はいないだろう。しかし、タブレットの裏側を支える場合、画面と顔を正対させるには関節の可動域を少し無理して広げなければならない。左手で持つならやや左ねじりに手のひらを返す必要がある。
 画家のパレットの方が、歴史も古いし、合理的だと思う。唯一それに対応し得るのはレノボのYOGAパッドシリーズか。
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CoreBook3上面ソケット。Type-C、3.5mmオーディオ。microsd, USB-microB(?使ったことが無い)
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Surface3はすべてサイドにコネクタはある。冷却口の造形が素晴らしい。

 Chuwi Corebook特有の欠点は
(5) 重い。1キロを超えている。1キロは、ノートPCとしては軽い方だが、片手で支えるタブレットでは致命的である。2.5Dガラスと金属筐体の結果かと。どうつかんだら良いものか。重量増はモーメントも一気に上げるので、指一本で保持するのは一層たいへんだ。実はこれと(4)との相乗効果で私の肩が壊れた(四十肩ではない、断じて)。ちょっとの無理でも、長期間続けば、急に痛くなる。痛みが取れるまで二か月を要した。ニー、ならぬショルダークラッシャーである。1キロのダンベル付けて書類見ても集中できない。
(6) 電池の持続時間が意外と短い。無充電で4時間もつかどうか。一日中の作業は無理である。積算計で見る限り、5000mAhちょっとで、私のスマホとほぼ同じ。
(7) キーボードがチョコレートなのは致し方ないとして、パームレスト部がバックスキン調の塗装である。これはSurface Proでも同じ。手触りは良いが、やはり汚れた手で使うと、みなこれに吸着されてしまう。防塵性と全く反対の、吸塵効果である。
(8) カバーをして、机上に置くと、裏のヒンジ部の荷重が、タブレット裏面にかかる。だから傷ついた、とかはまだないが、物理的には圧力が集中しているはずだ。
(9) タッチパッドが一部の他のBluetooth入力デバイスとぶつかり、無効になる。まあ、これはこの機種だけの問題かは確認していないが、複数のbluetooth機器でこの状況が見られた。Windwos XPならマウスをつなぐとタッチパッド無効化、なんて機能があったが、これはそう言うスイッチになっているのかわからない。

欠点だけでなく、良い点も挙げてみる。
(1) 意外と高速。Core-i3の最新版だが、ストレージが128GBのSSDである(≠EMMC)ことと相まって、Core-i7の古いSurfaceProとほぼ同等(大げさか?)の時間で起動する。Intel RST仕様のCore-i7 4Core機よりも早い。OSがHOMEのおかげかも知れない。
(2) 完全ファンレスのノースピンドル。熱くはなるが、あまり気にならない。
(3) 指紋認証が便利。認識も良く(甘い?)、画面表示も早い。
(4) キーボードがフルサイズ。これは日本製にありがちなテンキーを備えていない恩恵だと思う。スペースキーとタッチパッドが画面の真ん中に来る。キーボードは英語版だが、元マカーの私には逆に好ましい。Windows10 Home Editionも、もちろん英語版のまま使っている。
(5) 音に工夫の跡がある。決して良い音とは言わないが、よく出ている。
(6) (安げな)アクティブスタイラスが付いてくる。私はパッドでもスマホでも手書き入力派なので有難い(無論物理キーボードが付いていればそちらを使う)。これが、このタブレットを選んだ理由の一つ。ペンは単体で購入しても$20ちょいで買える。プレミア~ムなA社とかM社のスタイラスはよくできているが、その値段でユーザーを値踏みしている。

微妙なのが
(1) ペン付きタブレットだが、紙のように机上に置いて書き込みにくい。これは形態的な問題で、机のスペースを多くとる。付属キーボードが邪魔なだけ?
 ペンは便利な道具だが、キーボードが邪魔なんだよね。取って捨てるわけにはいかないし。楽器などを拭うマイクロファイバーの大判の奴を購入して、キーボードカバーと本体の間にはさみ、収納時には画面とキーボードの間に折り込んで、スクリーンのキーボードによる傷つきを防止し、本体平置き時には下敷きにしている。キーボード自体は独立した傾斜機能は無いが、私には問題ない。
(2) キーボード+タッチパッドの取る面積が大きく、机の奥行き分が必要。画面裏側のスタンド分は、数学的にこれまでのノート型と同じ面積しかとらないが、机上にも画面と同じ面積がペターっと取られるわけである。でもこれはキーの打ちやすさと相反条件なので一概に欠点とは言い難い。奥行きの短いキーボードに替えれば良いかも知れないが、この機種は自立しないのでスタンドも持ち歩くことになる。
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上がCoreBook用のペン、下がSurface3でも使えるペン。形はほとんど同じだが、互換性は無いのがいやらしい。ともに筆圧感知(1024レベルだけど)機能あり。Surfaceは最初純正を使っていたがすぐ壊れた。$20の代用品でも筆圧関知は付いているし、私の用途では全く問題は無い。

 Surfaceは型遅れの3だが、お値段で倍以上するだけあって、そのデザインは優れたものだった。できるだけ静音のファンを設け、机上に平置きしてもサイドから放熱できるスリットを備えている。また、キーボードの傾斜も考えたヒンジ機構は秀逸だ。ただ、裏面の下半分が二重構造になるので、そこはマイナス。

 Corebookのサイズは大判でカメラや指紋認証のある部分(事実上、そこが「掴み代」だけど)がまだ小さくできる可能性はあるが、プラスチックの安物の方が可用性は高まるだろう。Surface共々バッテリーの寿命が製品寿命である。これは良いものを長く使うと言う私のライフスタイルからは離れている。いや、電池が泡を吹くまで使うけどね。
 今のところ、ゲームに特化しなければメモリ8GB、ポータブルならストレージ256GBを最低基準として長く同一の仕様で使えている。私のデスクトップもメモリは8GBしか積んでいない。OSが安定すると言うことは良いことだ。これまでHDDが全体の足を引っ張ってきたが、SSDで一通りの落ち着きを見せていると思う。
 Corebookのストレージは128GBだが、ドキュメントリーダーとしては全く問題ない。製品版のメモリは6GBらしいがそれも世界基準で考えれば欠点とは言えないだろう。ただ、惜しむらくは「縦置きスタンド形態」を考えられなかったことで、これがあったらSurfaceにできない芸当の一つだったのに、残念だ。ただ、右側面にはボタン類は無いのでミニイーゼルなんぞを縦置きに使うのはありだ。

 でも、ひとつはっきりしていることがある。私が今後このスタイルのPCを買うことは無い。マグネットが許せない。