On the boundary of Genuine and Fake

低音が聞ける安価なヘッドフォン

例の、SONYのICレコーダーに使うべくオプションのステレオマイクロフォンECM-DS70Pを「一応」買った。これは今アマゾンなら3793円だが、某国産でSONY純正の安物、実売4.5ドル前後である。プラグインパワーがあるようで、録音感度は確実に上がる。と言うことは、反面ノイズも乗る、ってことだ。

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たいへん見づらいが、後ろの袋はこれが入ってきたものである。箱、説明書皆無。本体にはSONYロゴ。

わざわざ他国から購入するのにその一品だけってわけにもいくまい、ヘッドフォンを同じ店で適当に見繕って2本買い足した。それがJVC KENWOODの XX HA-FX3X(以下3X)とJVC XX HA-FX1X(以下1X)である。外見上はほぼ同じだが、前者が15ドル、後者が10ドルである。国内ではVictorによる輸入販売で、実売前者が4000円前後、後者が2000円前後で売っている。3Xが1Xより高級機と言うわけであるが、合わせても$25なので、違いを確かめるべく、両方購入した。
決して新製品ではないが、今回はそのヘッドフォンのネタである。

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左が3X($15)、右が1X($10)

写真を見ればわかるが、ほとんど見分けがつかない。違いは円筒型ハウジングの外側半分が3Xは金属製、1Xがプラスチック、コーン材質が前者はカーボンになっている。しかしその素材の違いは、本体をガードするプラスチック枠に囲まれて一層目立たない。この手のヘッドフォンは耳の穴に突っ込んで、微小な空気を通して鼓膜自体を振動させると言う原理で動いているが、その空間を大きさで音質が変わると言われている。
見た目にも大容量の空間を持つそれらは、とにかく低温に命をかけている。どちらも豊かな低音が明瞭に聞こえてくるが、3Xは明らかに固い。テクノとか、ビシバシ系のドラムを聞かせる音にはかなり良いマッチングであるが、耳にはあまりよくない。ヘッドフォンをしていると外部の声はまず聞き取れない。

 プラスチックボディの1Xもこの値段にしては非常に優秀である。音の曇は皆無であるが、角が取れたものでポップス系に向くだろう。通常のアンプであれば、「程よく使い込まれたヘッドフォン」の音を最初から出すのがこの1Xの方であり、コストパフォーマンスはこちらに分がある。最初からからこの二つを知っていたら、私は1Xを選択するだろう。

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だが1Xのプラグには何故だかはみ出た接着剤?の跡が…

スペックと照合してみれば3Xの方が高音側の再生力に優れ、低音はいずれも5Hz(!マジか)とか書いてある。
まあでも今回二つの機種を同時購入したのでこのような違いを言えるわけで、片方ずつ評価したらそうそう違いはわからない。

構造上ほとんど同じなので、同じ難点がある。
音の出口、即ち耳に差し込むシリコンキャップの内側に直径3mmほどの黒くて薄い円形の布?フィルターが「取り付けられている」のだが、シリコンキャップを交換する際に、ちょっと触れただけで容易に外れてしまった。フィルターには枠となる部品も無く、ただ単にホールの内側に置いてあるような状態で、はずれたフィルターも糊付けされたような跡も無い。それに外れたフィルターはちょっと目を離すと指先の静電気でどこかに飛んでいくので探すのがたいへんである。

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外れる前(3Xの右)

思うに、このフィルターの役目は外部からの埃の侵入を防ぎ、内部のコーンなどを守ることだと推察される。実際外れてしまっても音は変わらない。香港のサポートには連絡したが、このフィルターは元に戻す必要がある、触れただけで外れたなら販売店に連絡せよ、と言う無体な返事。送料だけでも製品価格を超えるのである。これは海外取引上のリスクと理解している。そもそも購入した店は業販向けの卸である。数百個レベルで取り扱う業販なら兎も角、1個しか買わない者がクレーム付けても送料と時間と関税(安いから今回はゼロだった)の無駄である。

ただ、この設計もしくは製造には無理がある。
他の商品にも同様のフィルターは付いているが、どのようになっているか調べると、まずフィルタにはそれを取り付けるリング状の枠があり、それを本体に被せ、シリコンキャップがその外側に付くもの、もしくはフィルターの外枠になるプラ部品があって、それで内側に抑え込むものが多いようだ。因みに国内Victorのサイトを見ると、他の機種でそのフィルター枠が外れて耳の中に落ちてしまう欠陥商品のアナウンスがあり、その枠ごとフィルターを外してしまえ、と指示がある。つか、フィルターは既に外れており、枠の部品だけになっていることもあります、とか書かれている。現在の国内向け全商品はこの外れやすい枠の構造は改められたようだ。これに比べると3X,1Xのそれがいかにお粗末な構造かがわかる。Victorが扱うものが何か改造されているのかと気になるが、頑丈なブリスターパックの外側からそれを窺うことはできない。

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外れたもの(3Xの左)

ここからは疑問点。外れたフィルターの孔の中を覗いてみる。このモデルはコーンがあると見られる円筒(本体)から、耳の穴の角度に合わせた細い円筒が突き出ており、そこに上記のフィルターとシリコンキャップが装着されているのだが、その細い円筒から覗くと、本体との接合部分で半分ほどしか孔が開いていない。半円状の隙間だけが音をつなぐ道であるが、これは意図されたデザインなのだろうか。波形面から考えると、開口部面積にはそれなりの最適値があるだろうが、開口部は円に限るのではないか。私なんぞは太い円筒ボディから斜めに細い管が出ているってだけで気になるのだが。

だがまあちゃんと聞こえるのでよしとするか。千円程度では十分な音質だと私の(安い)耳が言っている。
キンキン系の3XはSONYのレコーダーとよくマッチする。前回SONY音質をあれこれ言ったが、基本的に多少曇っているので、ちょうど良いかと。
一方の1Xは私のPCに刺さっているが、PCの音質はかなり歪む。なぜならDAコンバータとヘッドフォンジャックの間に様々なドライバや音質改善、ミキシング、イコライザーなどのソフトウェアを通ってきているので、純粋さに欠けている。そもそも音源がLossyな時点でかなり歪んでいる。詰まる所、「純音」に勝る高音質なんて存在しないってことだ。

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3Xにだけ付いてくるケーブル巻取りのゴム部品。1.2mのケーブルはワイシャツポケットには少し長い。

…そういえば昔、ホワイトノイズをPCで出して、それをマイクで拾って再生帯域を調べる方法があったが、今回のような耳の中で再生するヘッドフォンだと難しいかな。数値的に機械が正確に聞ける音をメーカーなら追究するのは正しい姿勢だが、個人でやっても意味が無い。可聴域は年齢により変わるし、人によっても違う。