復権する電子ガジェットたち (1) - Kobo gloの話

アンドロイドを手放したことで最悪の電池の奴隷状態から抜け出すことはできたが(あー、いや。使ってないタブレットがもう一枚あった)、機能的に統合していたデバイスが個別に次々と復活している。デジカメ、MP3プレイヤー、関数電卓、電子辞書…更に電子インクの電子ブックリーダーを新規に購入した。なるべくTPOに合わせて不要なモノは持たないようにしているのだが、カバンの中は自然とごちゃごちゃしてくる。
スマホは確かにお手軽で便利だけど、個々の機能に絞れば中途半端でちょっと物足りなかった。私の場合、例えばデジカメ一つとっても800万画素程度の、決して高性能なものは持っていないのだけど、その値段なりに割と熟考して選んだものなのでそうそう買い替えることは無い。無論、経済的な問題が最も大きいのだけれど。
それらをいっぺんに買い替えるのだからスマホなんて安い、と思う方には賛成できない。確かに最も進んだデバイスではあるが、最も早いとか、最も美しいとか、最も使いやすい、と言うものでもない。そんな半端な機器のくせに、ほぼ二年おきに八万円程度のデバイスの買い替えを迫ってくる電話会社の脅しに乗るつもりも全くないし、結果的にそうなってしまうのも癪に障る。
アンドロイド端末をマルチメディア記録兼再生デバイスと捕えれば、同じ予算内で上に挙げた個別デバイスを買い集めた方がパフォーマンスは上だろう。ソフトウェアによる拡張性は皆無であるが、一度に買い揃えなくても良いと言うコスト面でのアドバンテージもある。
た・だ・し、それらの内、一つにでも趣味性を求めたら即予算オーバーである。そういう意味ではアンドロイド端末は個人では到達し得ないコストとパフォーマンスの高度なバランスの下に構成されている。

さて、この流れで買ってしまった幾つかの新規デバイスがある。
一つ目は電子ブックリーダーの話。
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Koboコンテンツを売ってる楽天サイトに見るべき日本語の書籍はあまりない


商品はKobo gloと言うもので、楽天で売られている電子インクを使った奴。バックライトのせいか、ちょっとコントラストは悪いけど、薄さと軽さと拡張性に魅力を感じた。やっとこさ内蔵メモリを30GBに増やして、ハードが安定したところ。
結論を先に言うと、この端末は現在のソフトウェアの状態ではお勧めできない。
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これでメーカー保証はなし。SD-TFは4GBが搭載されているが、何故か半分は使われていない。
こいつをDDコマンドで32GBにコピーし、パーティションサイズを調整すれば一通り使える


電子ブックリーダーを買った動機は、私が買う本の中に、まれに裁断されたものが混ってきたためである。専門書などは元が高いのでネットで古本に罠をしかけて安いなーと思ったものをすかさず買うのだが、脇に小さく書かれている「裁断済み」と言う記述と、更に小さな文字で購入規約に書いてある返品のペナルティに気付かず、逆に罠にかかってしまう。それらを転売したことは一度も無いが、そこまで破壊された本は電子化するしかない。更に、最近はFireFoxのアドオンScrapBook経由でネットの情報を大量にPDF化しているので、そろそろ一つのデバイスにビューアーをまとめたかった(ってこれはかなり手間がかかるものだったが)。
裁断した本を買う、と言うのは海賊行為を助長する。名誉のために急いで付け加えると、私の場合本当に送ってくるまで気付かなかった。これは現代の焚書だと思うのは私だけだろうか。そんな紙切れはヤフオクとかアマゾンでも売っている。
電子ブックリーダーで読める文書の中でも、特に(スキャンした)画像情報ベースの文書は非常に手間がかかる。電子ブックが自動的にボールド化、余白削除、中央配置を行ってくれると良いのだけど、非力なKobo gloでは叶わず、ファイルをわざわざこの端末用に変換する。このため、電子ファイルは「加工前」「加工後」の二種類を管理せねばならず、また、管理するPCにはAdobeのDRM件ビューアソフトAdobe Digital Editionなどをインストールするものだから更に一つDBができる。また、KoboにはKobo Desktopなるもので購入した電子ブックを管理するので更にもう一つ。
一番読みたい論文とか、工学書はたいていPDFになっている。そして余白が大きく字が小さい。Kobo gloは1024x768と電子インク機としては高解像度なので、確かに表示はできるのだが、6インチの画面に細かいドットを追うことができない。無論これに困った先人たちが様々な変換ツールをリリースしてくれているのだが、何故だか読み込めなかったり、出力が白紙とか中途半端な細切れだったりするものだからフラストレーションはかなりなものである。
無論既に数々の秀逸なフリーソフトを活用し、それらで一通りの最大文字サイズを得るシーケンスは確立したが、殆どが非文字ベースのPDFと言う点で、ダメダメである。ただのUSBメモリとなるかも知れない。
青空文庫とか、市販…と言うかダウンロード販売の電子書籍ならば文字サイズには問題ないが、特に英文の文献において一度に表示できる単語数があまりに少なく、何を読んでいるのか不安になっていらいらすることがある。

電子ブックビューアーには確かに本棚数本分の容量があるが、反面、概覧性に欠けると言う致命的な欠陥がある。フリックに何とかついてくる程度の処理速度では、本をパラパラとめくる検索機能には遠く及ばない。あの、背表紙を机に当てて本を立て、頁をパラパラとめくって目的の位置を探し出す、という検索能力は、極めて高度なものである。電子化されていないが、「プログラム言語C」とか「AWKを256倍使う本」(って相当ピンポイントな例だが)などと言う本は索引の貧弱さゆえ、どこかに必ず書いてあった、と言う記憶を元に目的の記述の位置を探る辞書的な使い方をするものである。(だから「使える」技術書は皆ペーパーバックなのだよ。)
そして本来の?辞書データすら検索する機能が無い。Koboには単語をタップすると起動する辞書機能があるが、それはどんなデータからでも可、と言うものでも無いようだ。
まあ、もしかしたら頑張ってKobo glo用の電子辞書検索ソフトを作ってくれる人も居るだろうが、何せ仕様が不透明である。FAT32ベースのLINUXってことはわかっているけど。
物語のような最初から読む本ならばあまり苦労しない。技術書は非常時(究極の暇のとき)に備えて取り敢えず入れてはいるが、多分読まない。

電子インクの最大の利点、何よりも電池がもつ。それを最大に生かせるのはノート用途かと思う。Kobo gloには無保証の電子メモ機能がついてくる。これが早いページめくりと両立してくれると良いのだが。
この手の電子インクのノートは今結構出ている。現存する製品で最も期待度が高いのがシャープ製か。私は勝手にエンジニアノートと呼んでいるが、リスト用紙(今じゃコピー用紙だけど)の裏紙を束ねただけのノートを愛用している。まあ、記録用にはちゃんとしたノートを使っているが、殴り書きとか、テンポラリな測定結果とか、計算結果とかラフスケッチなどのそんな使い捨てのノートはこの裏紙の束を使う。この用途に電子インクのノートが向いている。んが、いかんせんまだ高い。百均ノートだと何百冊分かだ。1冊1000円くらいにならないかな。