メディアプレイヤーの憂鬱

 メディアプレイヤーと言うのは、まあ、よくある高圧縮低品質映像・音楽の類をテレビで再生する専用機である。大抵はSet Top Box、つまり小型の箱状でテレビの上や横に鎮座するものだ。
 
 私が最初のメディアプレーヤーを買ったのは数年前。別売りの3.5インチのHDDを一台内蔵する、外付けHDDケースくらいの小さな箱で、キワモノ(つまり動作保証が最初から無い、動作不良は自力で直す)と呼ばれていた。その通りで、接続一発では映像は出なかった。それでもHDD別で数万円もするものだったから手を入れてかなり使ったんだけど、悲しいかな映像の半分くらいは再生できなかった。この手の商品の良し悪しは、対応する形式の豊富さが第一、画質は二の次、音質は三の次。

 その頃から更に圧縮形式は増えているし、またメジャーな圧縮形式も変化してきている。それでもかなり広範囲にサポートする製品が出てきて、何よりテレビを買い換えて大画面、高品質な映像になったのでこのたび新しく買い直すことにした。
 
 今回最初に選択したのは別売り3.5inch SATA HDDが内蔵できるFunTwist FullHD1080p対応メディアプレイヤー Cinema352 って奴。AMAZONでの評価もまずまず、そこそこの形式は再生できるし、NASとBit Torrent機能も備えている。

 実は今回このNAS機能を必須条件とした。これまでもパーソナルNASを一台使っていたが、非常に遅いし、音がうるさい。でもメディアプレーヤーがNASを備えると、例えばNASをiTunesのデータ置き場にすれば便利かも。できれば容量的にしょぼくなった既存のNASを置き換えたいと思った。
 実はNAS付きメディアプレーヤーで、特にNAS強化志向ならば、QNAPの製品が信頼性が高そうだと思っている。ここは元々が業務用NAS RAIDなどのストレージ専業メーカーだが、一機種だけコンシューマ向けのメディアプレーヤーを出している。しかし値段が三倍なんで買えない。今回はパス。
 
 で、来ました。Cinema352。Made in Taiwan。初期設定でHDMI接続を選び、音も自動設定にしたら画面がブラックアウト。英語版のマニュアルにはコンポジットでつなげば画面は復帰して設定のやり直しができると書いてあるけど、黒いまま。で交換。orz

 待つこと三日。次はその設定項目に触れないようにせっせと画像を溜め込んで再生し始めたのは良いけれど、フロントのUSB端子が使えないことが判明。基板にコネクタが斜めに半田付けしてあり、フロントパネルの開口部と合わないのが原因。
 まあ、これくらいいいか、と二、三日諦めかけたが、数日経ってもまだ悩んでいるので思い切ってクレーム出した。Made in Chinaなら諦めたかもしれないが、Taiwan製は期待して良いはずだ。んが、アマゾン扱いの同機は在庫無しで返金のみ受付になった。その前に日本代理店と短いやりとりを行ったのだが、本製品はその代理店による一年保証と書いてあるにも関わらず、「在庫無いんで修理受け付けていませーん」と臆面も無く述べやがった。この代理店、製品保証してるって言うより、単なる輸入販売元ってだけでマージン取ってる。
 
 上記の不良以外にも、Cinema352はNAS(Samba)が異常に遅い、torrentはproxyが設定できない。NAS, torrentに関わらずネットワーク系を使用中は映像の再生や、ローカルUSBからのデータ転送ができない(無反応になる)事実上のシングルタスク。おまけに我が家のメインルータは扱いにくくて不安定と悪名高いPlanex製なせいか、torrentをしばらくやってるとルータ共々ネットワークがコケる…と言った難点があった。
 まあ、不良品は交換すればよいし、こけたネットワークは再起動すればよいのだが、面倒なのはデータのバックアップ。ディスクのフォーマットがLINUXで、このディスクを他のプレーヤーやWindows機につないでもすんなりデータ取れるとは思えない。今、2TBのデータをバックアップしているけど、一日がかりだね。フォーマットだけでも半日かかる。疲れました。
 まあ、手放して正解かも。OSがLinuxでtelnet接続できるのは面白かったけど、ROMで書き換えできないからねぇ。ちなみにログインIDはrootで、パスワードは無し。これって…
 
 返却時に問題が一つ。最初買った時に、内蔵用の2TBのHDDを同時購入したのだけれど、納品書を初回交換時に送ってしまっているからこいつが返品できない。まあ、ぐだぐだ事情を話せば太っ腹のAMAZONなら返品に応じてくれるかも知れないが、面倒臭い。だから、最初は他の機種に買い換えるにしても2TBの3.5インチを内蔵できる機種にせざるを得ないと思っていた。

 しかし、目ぼしいものはディスク無し(外付けUSBかネットワーク)か、あっても2.5インチが多い。ここで、先ほどのQNAP製が条件に合うのだが…やっぱ高いよ。本当は外付けタイプは嫌いである。なぜならそれだけコンセントを消費するからだ。ACアダプタもあるから予め多数の口があるタップは使えず、蛸足も良いところである。更にネットワークケーブル、HDMIケーブル、コンポジットケーブル、USBケーブルが絡まっている。
 
 でもしょうがない、3.5インチ用の外付けUSBケースを買って使うか、と腹を決めたらメディアプレーヤーには結構選択肢がある。あれこれ選んで再生できる形式が多いプリンストンのPAV-MP1なる機種にした。人気が高くて評価も悪くない。思うのだがアマゾンの評価者二人で星4.5の商品と、評価者二十人で星4つの商品。どちらが良いだろうか。
 
 お値段はCinema352より2000円くらい安いが、安くなった分ケースを買わねばならない…と考えて思い当たった。
 今当家のテレビには二台のUSBディスクが接続されている。どちらもIOデータのHDCR-UEシリーズ。一台(500GB)はテレビのおまけで付いてきたやつ。もう一台は後から足した奴(2TB)。すごく便利でよく使っているが、実際、これらの容量をフルに使い切ることはない。前者の中身をコピーして後者に統合し、前者のケースに2TBの新しいディスクを入れれば良いのでは。それならコンセント数も増えないし。500GBが余ることになるが、デスクトップに入れて活用しよう。遅いだろうけど。
 で、早速HDDの分解を始めた。最近は外部電源(ACアダプタ)になったせいで、すこぶる小型である。このモデルの良いところはファンが無く、動作音が殆どしないこと。まあ、テレビ用途を前面に押し出して売っているから静かさは重要。今回買った2TBじゃ過熱するか少し不安だが、あえて遅いドライブを選択したのだし大丈夫かな。まあやってみて様子を見よう。感心したのはケースを閉じるビスが一本も使ってないこと。侮りがたしMade in China。このプラスチックのモールド成型の鋳型精度を持ち込んだのが日本人なら許せないけどね。> I/O Data
 
 最初は箱根で売っている秘密の小箱みたいな感じで試行錯誤していたけど、継ぎ目をよく見ながら割っていくと、かぱっと外れた。プラスチックの突起の折れもなし。中身は更にシンプルで、HDD自体をケースに固定するビスは一本も無い。USBからSATA変換基板を小さなフレームに止めるのに二本、HDD本体をそのフレームに止めるのに二本しかビスが無い。基板上にはチップが二つしか見えない。このどちらかが暗号関係のチップなのね。

 再び組み直してPCに接続してみる。電源連動OK(ちょっと反応遅い)、認識容量OK。あれっと思ったのは、Cinema352でフォーマットしたらext3あたりのLINUX用ファイルシステムになっていると思ったが、WindowsではNTFSでフォーマットされているように見え、ファイルが見えた。でもこれは以前にも経験した。なので信用せず、新たにフォーマット。このとき、パーティションツールで見ると前後に未使用の領域が少しあったので拡張。

 ACアダプタはいただけないが、この外付けHDD、静かでよろし。USB3.0対応だったらもっと良かったけどね。
 元々入っていた500GBがHGST製、入れ替えたのがWestern Digital製。今じゃ統合されたけど。500GBのHDD、これ円盤1枚じゃなかろうか。とにかく軽くて薄い。
 
 因みにプリンストンのPAV-MP1にはBit Torrent機能は無い。まあ、あっても動作中に再生できないんじゃ嬉しくない。
 
 で、届きましたPAV-MP1。Cinema352に比べるとものすごーく安っぽいプラスチックの小箱。2.5インチディスクならちょっと厚みを増せば入りそう。
 最初、HDMI接続にすると最初は音が出なかった。すわ、またまたまた不良品?しかし落ち着いてオーディオ設定を一つずつ試していくと出力された。音量は小さめで、音質はお世辞にも良いとは言えないが、ま、これはソースのせいかも知れない。
 
 ソフトウェアの完成度はCinema352よりもはるかに高い。両者似たような内容の起動画面だが、NAS機能もあって外付けUSBの記憶装置をNTFSのままWindows Networkに接続できる。動画再生中でもNAS機能がちゃんと使える。
 また、Windows/Macの公開フォルダからメディアを再生でき、更にはメディアサーバがWOLに対応していると、それを叩き起こす機能付きだ。(使わないだろうけど)
 
 比較的動作もさくさくしているし、お勧めかも。