電位治療器と言う「商法」

 世の中にここまで人をバカにした商法があって、口の端に載せるのを思いつきもしなかったんだが、身近にいる者が危うく取り込まれそうだったので、これも何かの機会かも知れない、記すことにしよう。

 まず、電位治療器と言うモノをご存知だろうか。まあ、昭和三十年代から軍事訓練で痴呆化した国民を対象に売られているので、中にはおじいちゃんとかおばあちゃんが使っていた、と言う方も多いだろう。でかい箱にスイッチやランプ、たまにメータが付いていて、そこから電極パッドや、敷物に通電し、その上で寝起きしている間に健康になる、いやいや、それでは生ぬるい、彼らの言い方によればありとあらゆる病気が「治る」と明確な薬事法違反の下に売られているものである。
 更に狭義で言うなら、電極を患部に当てるタイプではなく、その敷物状に特化したものを言うらしい。

 はっきり言って、これは平賀源内の「えれきてる」だ。ただ静電気を体に与えるだけ。で万病が治る原理は説明されない。これは、ちょっと前の話題で言えば電磁波が体に悪い、ってことが証明されていないことと殆ど同じ理屈、体に悪いと証明されていないから体に良い、と言って売られているモノである。この点について彼らが体に良いとする根拠は「昔からそう言っていた」と言うことだそうで、それでも電磁波悪影響が騒がれた時には必死で目立たないようにしていたようである。ま、電線のせいでガンになった、って人もいるわけで、どちらも怪しいことこの上ない。
 価格は概ね三十万円以上、百万越えるのもあるとか。おそらく中身はトランスとコンデンサ。パターン制御のための百円くらいのワンチップマイコンくらいは備えているかも知れないが、秋葉原で買えば必要な部品は五千円以下、それよりケースや塗装代がかかる。明らかにぼったくり価格。写真はあらゆるところに掲載されているが、まあ、朝鮮か中国好みの金色茶色、赤などなど。うーんなんと言うか、戦前のデザインかな。

 ちょっと調べてみると、ヘ○○ト○ンってのが有名らしいが、殆ど同じ商法で三十種類くらいあるらしい。まだまとめきれていないが(ってあまりにもくだらないので調べる気もないが)、彼らの商法を要約しよう。
(1) 治療院が各地にあり、そこに最初は無料で招待する。主な宣伝経路は口コミ、と言うのがミソ。その土地の成金とか、ま、そうでなくても金持ちに売っているので、今ではそこから下々に伝わるようになっている。
(2) 治療院ではこの装置を「売りません」と必ず「言う」。これを根拠に、購入した人は自分から「購入したい」と言った、と言質を取るわけだ。
(3) ノルマを課された、もしくは歩合制のセールス部隊が巡業していて、貼紙やらチラシなどで短期間、人集めをする。ちなみに求人広告は月収四十万円台とか。
(4) あと○○日でここは閉じます、ってのが最後通牒とか。(閉じても少しはなれた所にまた開かれる。)
(5) 客からは、紹介してくれた人や、人柄の良い治療院の先生(医療従事者免許は取ってないが、そう呼ぶらしい)に何度もタダで使わせてもらって悪い…と言う心理を引き出す。
(6) 地方の小都市で説明会を開催し、そこに客を呼ぶ。これがよくわからないのが霊感商法じみたところで、ここに呼ばれた殆どの客は契約をする。(ひょっとしたらその内情報が入るかも知れない。)
(7) 買うと、セールス部隊は消える。但し、営業所はあるので返品を申し込むと提訴される。消費者センター経由だと、消費者センターの職員を名誉毀損で起訴すると脅す。良識ある信販会社と連名で返品を迫ると返金される。(って例があったそうな。)…一括払いするともうダメ。
(8) 但し、敷物などの消耗品を所望する人にはコンタクトを続ける。

 そうそう、説明に何とか博士、とか論文がどうの、とかが後ろ盾として紹介される。でも学者なんて石投げれば当たるし、学会誌は私の論文でも載せてくれる。
 妙なことに、この後ろ盾あたりはどの電位治療器でも同じことを言うようだ。そしてその発想の元が、「電線の下は作物がよく育つ」ってことが引き合いに出される。そう、これは昨今の電磁波の悪影響と全く逆の話であるところがちょっと興味深い。ま、この電位治療器を作った博士なら電磁波の良し悪しに明確な回答が得られたと思うんだが、ちょっと様子が伺えない所を見るともう死んでいるのかな。

 この商法の肝は、知能が高い人ほど「この装置は効かない」と言えないことだ。「この装置は効くのですか」と言う問いがネットを飛び回っているが、効かないと言う証明ができない。まあ、ニヤリと笑って「気休め、ブラシーボ」と言っておくに留めるだろう。
 それと、某大型掲示板サイトや、●●知恵袋、なんてサイトにこの手の質問がされると、時々問題のすり替えがされていることがある。「効きますか」の問いに、「××と言う機種は電圧がどーたらで、パターンが云々で、イオン比があれ対これだから…」となぜか機種の話や要らぬ薀蓄を解説していたり。まあ、業界(何たら協会ってのがある)と効果があると信じたい購入者で書き込んでいるようだが、無様だ。(イオン比って何?)
 効果なんだが、まあ、電気を通すんだから、一時的に何かの変化があったり細胞が死んだりすることはあるだろう。そりゃそうさ。でもそれがなぜ病気の原因を取り除くのか、理論的な説明は無い。
電子針治療器、とか電気流して筋肉を伸縮させる按摩器の類は今でもあるし、使ってみれば実際に筋肉は動く。ま、この手の機械は数千円から売っている。そのことによって一時的な肩こりとかは取れるかも知れないし、逆に凝り固まることもあるだろう。でもこの静電気を発する敷物に乗っていても、筋肉も動かないだろうね。せいぜい、そこで他のものに触ってバチンと来れば筋肉は動くかも。
 だんだん細胞が死んで、早くボケを始まらせるのがクレーム処理の要だったりして。(これは揶揄だよ。)

 ま、どっちにしろ、現時点がんも治るとか「言うのは」明らかに無謀である。それによって金品をせしめれば詐欺の類だ。うん、もし私が審判員で裁判にするなら、現時点では有罪だ。

 いや、はっきりさせておこう。この装置の効き目とその商法は別問題である。
 病気を治す可能性は限りなくゼロに近く、値段はバカバカしいほど高い。ま、安いとありがたがる人が減るからね。
 商法は明らかに違反であり、口上は詐欺である。これは特に○ワー○ルスってので顕著らしいよ。

 本当は管轄官庁がちゃんと取り締まるべきなんだろうけど、既得権益の一つか、まあ頭の悪い官僚か政治家が買ってるんだろうな。ま、三流の政府だからね。

 言っとくよ。
 「気休め、ブラシーボ。」