田舎の健康ヲタと自分史上最悪の誕生日
田舎に戻って三年、だんだんわかってきたが、この街の人々は、社会人であれば年齢に関係なく、健康の話が好きでたまらないらしい。そう、日本人の定番、お天気の話と同じかそれ以上に健康に関する話をする。
最初は老人の人口が多いせいか、とも思っていたが会社で私より随分若い独身者も似た様なものである。
私の場合、都会では早く人生を終わらせたいと思っていたのも否めないが、人に健康法を話すなんて皆無だったし、そもそもそんなネタすら仕入れていなかった。
しかし、ここでは自分の親までが健康教とも言うべき民間療法の虜となっており、何やら意味のわからぬ薬効を唱えた合法ドラッグ(と呼んで間違いないだろ?)を大量に、しかも安くない値段で買い込んでいる。
まあ、通信販売でもその手の商品は百花繚乱である。古典である青汁に始まりグルコサミン、ヒアルロン酸、セサミン、フコイダン、アガリスク、コラーゲン(こりゃ美容か)、DHA、大豆ペプチド、ウコン…まったく、私の記憶領域を返して欲しいくらいである。まあ、健康について関心を持つことは悪いことではないし、そりゃ、それぞれの成分はそれなりに効くのかも知れないが、摂取法とか分量とかお値段とか間違ってない?副作用ないの?すべてをいっぺんに服用しても問題ないの?
特に漢方系の薬品は、長く服用してゆっくり、持続的に効くものだと聞いている。だからこれらの合法ドラッグは、摂り始めたらいつやめても良いか、その取扱説明書には何も記載がないだろう。(私が見たのは一部なので、全てがそうだとは断言できないが。)だから、もし悪い飲み合わせがあるとなかなか直らないだろうなーと言う気もする。
ま、どんな商品であるにせよ、小金持ちの老人層から金を巻き上げるシステムになっているわけだ。よくあるだろ?「年齢と共に失われていく○○を補っていつまでも若々しい××ライフを」って。つまりは死ぬまで買い続けろ、ってことなのさ。
…って常々思っていた罰が下ったのか、酷い目に遭った。
唐突だが、実は先日誕生日だった。まあ、だからと言ってサプライズはなし。普通の平日になる予定だったのだが。
嘔吐下痢症になってしまった。
昼食をとった頃からおなかの調子が悪く、夕方になって嘔吐した。二回ほど。
帰っていい、と言われたので、一時間早退となったのだがそこからが地獄。
普通は自転車に乗れば10分強の道のりが、自転車にもたれながら押して歩くことになるのだが(ふらふらで乗れなかった)、無限とも思われるほどつらかった。
下痢は無いのだが、吐き気と悪寒が絶えず、世界がぐるぐる回っていた。
家にたどり着いたら自転車のスタンドもかけられないまま、ばったり倒れこんでその日は起き上がることができなかった。熱は38.5度。何とか家内を電話で呼んだのだが、息をするのもままならない。うめき声を上げまいとしてもずっとうんうんうなっていた。その日の帰宅後は布団に移るのが最もつらかったかな。
インフルエンザの予防接種は先週済ませていた。そのあおりなのか、それともノロなど新手のウイルスなのか?実はその日、私の前に座っている同僚が嘔吐下痢症を家族からもらって休んでいた。限りなくクロに近い。頼むよ~そんなんで出社しないでくれい。
翌日、何とか車に乗り込んで医者へ。何のウイルスかは特定されなかったが、対症療法の薬を幾つか処方されただけ。小さな病院なんで、その手のものを保健所に嗅ぎ付けられたくないのか?いろいろ邪推は募る。
それでも何とか持ち直して歩けるようにはなった。症状はサイクリックに発生するが、初日ほどではない。
今はその間隙を縫ってこれを書いている。
こんなときに使う健康って言葉と、上で書いたような合法ドラッグ商売で使う健康って言葉は意味が同じでいいのか?