年末調整と背番号

 今年もまた年末調整の時期が来た。日本のサラリーマンはこの時期に一連の○○控除申請書を出すだけで扶養者の所得税や、保険・年金と言う名の「準」税金への支払いに関して控除を受けられるのだが、楽あれば苦あり。税務署などの職員の数もこのためだけに増えているのであり、そこにはそれなりの税金の支出がある。

 その申請用紙たるや、住所と署名を何回も書かなくてはならず、また無理矢理A4サイズに収めるため記入欄がどんどん小さくなっている。裏面には書き方が細々と書いてあるが、一体この紙切れは説明書なのか、申請書なのかわからない状態である。細かなボールペンの文字を追って税務署の職員がその責任を自認しつつ一々チェックしているとは到底思えない。(もちろん会社の経理担当者がやらされているのである。)

 また、ここ数年、その申請用紙には個人番号と言う名の背番号を書かされている。その番号を書く欄も、他の記入欄の面積を減らす一因なのだが、この番号を書かせているのにどうして住所や名前を書く必要があるのだろう。まあ、署名程度ならわかる。しかしこの番号は少なくとも住民票とは紐づいているはずだが、現状の書式では記入項目が増えただけで、職員にとっても確認項目の負担が増え、結局のところ何も簡略化(=電算化)されずに税の負担減になっていない。三文判に至っては全く意味が無い。印鑑証明のある実印であれば、背番号並みに簡略化できて然るべきだ。

 何も納税に関するものだけではない。相変わらず住民票を要する場面は減らないし(そう、この個人番号は紙の住民票を発行する手間すらなくさせることができるはずだ)、役所手続きで簡単になった、と思う事は一つもない。
 例えば私は今年運転免許の更新を行った。ちゃんとシステムが機能していれば、免許証一枚を持参するだけで、手続きは済むはずである。無論データベース上で個人とその免許番号が紐づくはずだからである。そうすれば、免許証のIC化なんてのも無駄なコストである。運転免許試験場では本人確認と必要な健康チェック(主に視力)だけで済むのである。ああ、無論、法改定に伴う講習や違反者・初心者・高齢者講習の要否については別の議論である。

 今、明らかに、公務の電子化を進める部署とその推進議員がさぼっている。

 彼らには納税や各役所手続きを、来るべき高齢化社会に備えて可能な限り簡略化し、公務員の人員を減らし、あるいはシフトし、年金問題を回復させ、馬鹿な縦割り行政を正して行政コストを下げる義務がある。でなければ最初に削除されるべき部署である。

 電算化推進に費やした金の効果を示せ。

 大枚はたいてどのかの大手にシステムを作らせたのだから、今後は当然何かが、いや、具体的には税や「準」税金の額が減らされるべきで、それなくしては失敗した施策なのである。

 もちろん、電算化に伴って悪意を持った輩の横行は心配される。所謂法の抜け穴を突いたり、なりすまし、虚偽申告、公文書偽造の横行も懸念される。しかしそれを心配するのなら、個人番号は本来不要だったのではないか。個人企業でも同じだが、電算化はそのリスクを承知した上での移行が前提である。一度移行を決めたのなら、そう言ったリスクの洗い出し、対策、違反者の罰則強化など、総合力を以てやるのだ。

 こう言った「事業」にはリスクのリストと対策を請負業者に任せる言う、いい加減な職員がつきものである。その結果、出た損失の始末をどうつけるのか、それを含めて役所側が作成し、請負業者に指示、検査するのである。それができない部署に予算を使う、あるいは提案する権利はない。さっさと辞職して税金の無駄を減らすべきだ。


 納税を米国流にすれば、サラリーマン個人の経理負担は増えるが、必要ならそれも仕方ない。それを肩代わりする民間の業者(つまるところは会計士とか行政書士)の仕事が増えることには何ら問題は無い。まあ、介護業界同様、外貨は稼げないが、会計用のソフトウェア業界なんかも潤うのではないかと思う。

 この時期、いつも思うことである。